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プラネットユーザー会 2018

「製」「配」「販」の連携による物流現場の
生産性向上と働き方改革
~快適なドライバー労働環境を目指して~

荒木 協和 氏
サンスター株式会社
ロジスティクス担当 理事

トラックドライバー不足が深刻化する今、業界として取り組むべき物流現場の生産性向上とドライバーの労働環境改善について、サンスター株式会社の荒木協和氏にご講演いただいた。

*本稿は2018年11月に行われたプラネットユーザー会2018における基調講演の内容を『PLANET vanvan』 編集部で要約したものです。

(PLANET vanvan 2019年冬号(Vol.121)掲載記事より)

モノが運べない時代が来る

 このままでは、モノをつくっても、運ぶことができなくなるかもしれない。トラックドライバーの労働環境は、長時間労働、過重労働など過酷な状況で、なり手が減っている。慢性的なドライバー不足により、物流事業者が突然運賃を倍近く値上げしたり、配送を拒否したりするケースも出てきている。
 このような状況をつくり出しているのは、物流事業者ではなく我々メーカーを含む発と着の荷主側だ。ただ、現場のことは良く解らず(解ろうとせず)、物流事業者が上手に処理してくれるという、任せっきりの姿勢でいた。しかし平成26年に国土交通省から労働環境改善の行政指導があり、物流事業者に事故や違反などがあった際の荷主勧告制度の運用強化が図られた。また、平成29年にはトラック運賃の規約が改定され、積み込みや荷待ちといった運送以外の作業料金を請求できる環境整備が進められ、責任範囲が明確になった。更に物流環境の悪化から発生したドライバー不足などで、製造して販売したくても製品が運べない状況となってきた。そこで荷主が自らの責任により、物流事業者の労働環境改善を実践していかなければならない必然性が増してきた。
(※)荷主勧告制度:「荷主勧告」は、貨物自動車運送事業法第64条に基づき、トラック運送事業者の過積載運行や過労運転防止措置義務違反等の違反行為に対し行政処分を行う場合に、当該違法行為が荷主の指示によるなど主として荷主の行為に起因するものと認められるときは、国土交通大臣が当該荷主に対し違法行為の再発防止のための適当な措置を執るべきことを勧告するもの。(出典:http://www.mlit.go.jp/common/001204970.pdf)


ドライバーの待機実態調査

 2017年、まず発荷主(メーカー)側で、待機実態の現場調査を行った。積荷を載せた車両が卸売業倉庫へ到着し、荷降ろしが完了するまでを調査したところ4時間以上もかかっており、労働環境の悪化を招いていることがわかった。当日朝に到着した車両の場合、受付から荷降ろし開始まで4時間以上もかかっていた。そしてその主な要因は、何時積荷を降ろし出せるかわからないので、少しでも早く着いておこうという心理が働き、前日の夜から待っていることが解った。
 それなら、荷降ろし時間の予約システムがあれば、問題を解決できるのではないかと考え、システムの調査、ドライバー、倉庫への聞き取り調査を行なった。すると意外な答えが返ってきた。「希望の時間帯を予約できなければ結局早めに行って待つ順番待ちのゾーンで待つ」「日中は渋滞があるから、指定時間に着くためには、結局早く出て着いてしまうから待機は無くならない」といった声が上がった。また、倉庫担当者からも「繁忙期は、倉庫の受入可能な物量を超える入荷量があるから、待ってもらうしかない。」「手降ろし納品が多いと予約時間の枠内では収まらない」等の話があった。
 つまり、予約システムは有効ではあるが、それだけでは根本的な解決にはならないということだ。ドライバーの待機時間を解消するには、メーカー、卸売業、物流事業者の「製」「販」「配」が連携した倉庫作業の生産性向上が必要なのである。


環境改善を困難にする要因

 現場をよく知ることで、ドライバーの労働環境の改善を困難にしている2つの要因が見えてきた。その一つが、商流部門と物流部門の分離だ。商流の情報はEDIでオンライン化されており、物流事業者へ一方的に出荷情報等を流す。しかし、物流情報が商流にデータで流れることケースは少ない。情報の一方通行化となっている点だ。その結果、物流現場の実態を知らない生産や営業担当者が、物流事業者の処理能力など考えず、自分達の目標達成のために活動してしまう。出荷量は時に倉庫の処理能力を上回り、現場に大きな負荷となっている。
 もう一つは、現場だけでの処理だ。倉庫間の物流では、荷づくりや仕分け、検品、荷待ち、積み込み、荷降ろし、入庫仕分け、ラベル貼りなど、配送以外にも実にさまざまな作業がある。それらの作業は現場判断を取っており、とくに配送部分はドライバー一人の采配にゆだねられているため、ブラックボックスになっている。この問題が上層部にまで伝わらないため、改善につながらない。


物流現場の改善は一丸となって取り組むべき課題

 2017年10月から、発着荷主・行政・トラック協会・物流事業者の連携による、物流労働環境改善に向けた取り組みの実証実験が行われている。発倉庫から5つの施策(①事前情報による届け先フロア仕分け、②入荷製品情報(ASN)の送信、③優先荷降ろし、④一貫パレット納品、⑤パレットRFID自動検品)を行ったところ、待機時間が4時間17分から20分へと大幅に短縮され、荷降ろしの荷役時間も半減した。
 ただし、この仕組みを実際に運用するには多くの課題がある。納品時のボトルネックは各倉庫毎に違う。ロケーションも異なる。また個別企業で改善しても効果は少ない。そこで、共同の業界標準システムとして、EDIでの受発注のやり取りにそれらの情報を載せることができないか。その意味でプラネットの役割には大きな期待を寄せている。
 そして今回の活動を通じて、物流現場の労働環境の改善は、日用品・化粧品業界全体の問題であり、「製」「配」「販」が一体となって、早急に取り組まなければいけない課題であることを切実に感じた。