2024年の訪日外国人数が過去最高を更新
「インバウンド消費を拡大させる意識と行動 2025」を読み解く
2024年の訪日外国人数は前年比47.1%増の3687万人。コロナ前の2019年を約500万人上回り、過去最高を更新しました※1。訪日外国人旅行消費額(図表1)は前年比53.1%増の8兆1257億円となり、2019年比68.8%増を記録しています※2。当社ではそうした訪日客の買物動向を探るため、本年3月に「インバウンド消費を拡大させる意識と行動 2025」を発行しました。そのポイントをご紹介します。
※1 日本政府観光局『訪日外客数』2024 年推計値より
※2 日本政府観光局『インバウンド消費動向調査』2024 年より
ー 私がご紹介します ー

顧 維維
マーケティング&
イノベーションユニット
チーフプランナー

訪日頻度の高い人が多い台湾・香港 「日本でしたいこと」にも違い
前回(2023年)の調査は訪日客数1位の韓国、2位の中国、3位の台湾の3か国・地域を対象に行いましたが、今回、韓国は大統領の戒厳令発令に伴う政変や航空機事故などがあり、海外旅行マインドに影響する懸念があったため、調査対象から外しました。代わりに訪日客数5位の香港を調査対象に加えました。
調査は訪日経験1回以上(2022年10月~25年2月)の人が対象ですが、中国は2回の人が最も多く、次いで1回、3回と続きました。一方、台湾は5〜9回が最も多く、次に10回以上。香港も5〜9回が最多で、次が4回と、台湾と香港はかなりの頻度で日本を訪れている人が多いのが特徴です(図表2)。
この訪問回数の違いが、図表3の訪問目的(日本を訪れて、したいこと)にも影響を及ぼしていると考えられます。
図表3を見ると、中国は「東京・京都など有名な観光スポット巡り」(52.9%)が1位で、「日本の食事を楽しむ」(51.6%)が僅差の2位でした。「日用雑貨・化粧品・医薬品の買い物」(43.9%)も4位に入っています。
「日本の食事を楽しむ」は台湾と香港では1位となっており、日本の食への関心の高さがうかがえます。
台湾は2位が「食品・おみやげのお菓子等の買い物」(69.9%)、3位が「日用雑貨・化粧品・医薬品の買い物」(66.9%)と続きました。リピーターが多いこともあり、観光より食事や買い物を楽しみたいという意向がうかがえます。
一方、顕著な違いが見られたのが香港です。2位「日本発の文化(着物・忍者・アニメ・ゲームなど)を楽しむ」(43.2%)、3位「山や湖など自然を体験できるエコツーリズム」(40.9%)と続き、体験型の消費が主となっています。
香港は突出して高い項目がなく、「食品・おみやげのお菓子等の買い物」(37.0%)、「日用雑貨・化粧品・医薬品の買い物」(21.4%)なども一定の関心を持たれています。

日本製品が日常生活に深く浸透 多くはネットを通して入手
日常生活における日本製品の購入・利用状況(図表4)では、いずれ国・地域でも多くのカテゴリーで50%を超え、日本製品が暮らしの中に深く浸透していることが分かります。
中国で最も割合が高かったのが「化粧品」(7.9%) で、「医薬品」(64.3%)、「食品」(63.4%)、「日用品」(56.6%)、「菓子・飲料」(54.1%)と続きます。
特に「化粧品」は「日本製品(他国製品を含め)に対する顧客ロイヤルティ」の調査でも、自国(中国)製品や韓国製品を大きく引き離して1位でした。
中国における日本製品の購入はネットの利用が多く、「国内EC」と「越境EC」を使い分ける傾向が見られます。薬用化粧品など一部の化粧品は「越境EC」でしか購入できず、コロナ禍では中国製の化粧品に対する評価が高まりましたが、再び日本製品に回帰していると考えられます。
台湾は「医薬品」(83.7%)が圧倒的に高く、「食品」(71.6%)、「菓子・飲料」(71.1%)は70%以上。「化粧品」(64.2%)、「日用品」(60.7%)も6割を超えました。
台湾では日本製品の愛用者が多いこともあり、「訪問目的」でも「食」に続き「買い物」が2位と3位に入るなど、買い物を目的に日本を訪れる人が多いことがうかがえます。
香港の場合は「ペット用品」(47.4%)以外、すべてのカテゴリーで5割を超えており、日本製品がまんべんなく購入・利用されているのが分かります。日本製品の購入場所は、「医薬品」以外は「国内ECサイト」が最も多く、普段利用している日本製品が香港国内ECでも十分に販売されていると思われます。

中国は化粧品、台湾は医薬品 香港はまんべんなく購入
今回の調査では、訪日時に実際に購入した日本製品を詳細なカテゴリーに分け、それぞれ「購入して、日本滞在中に消費したもの」と「お土産用として購入したもの」を尋ねました(図表5)。
中国は「医薬品・化粧品・日用品」において、「滞在中」は「口腔内ケア用品」(45.1%)、「基礎化粧品」(40.3%)が40%を超えています。「お土産用」では「基礎化粧品」(47.3%)、「メイクアップ化粧品」(45.3%)が1、2位となっており、化粧品人気の高さがここでも裏付けられました。
台湾は図表3の通り「食品・その他」の割合が高く、「滞在中」は「アイスクリーム・スイーツ」や飲料系、「お土産用」は「ビスケット類」や「チョコレート」などの購入率が高くなっています。「医薬品・化粧品・日用品」では「お土産用」で「基礎化粧品」(42.4%)が1位、次いで「風邪薬」(40.0%)となっています。
香港は「医薬品・化粧品・日用品」「食品・その他」のほぼすべての項目で30%を超えるなど、いずれも高い購入率を示しました。「買い物」は旅の目的としての優先順位は低かったものの、香港では普段から日本製品を購入・利用している人が多く、訪日と買い物はほぼセットになっていることが見て取れます。

情報収集にネットを活用 日本製品の魅力を伝える発信を
今回の調査目的の一つはコロナ後のインバウンドの状況を探ることです。訪日時の旅行消費額1位の中国は、訪日客数では2位ですが日本への直行便は増えつつあり、訪日意向も高いため今後の伸長に期待が持てます。まだ日本を訪れたことのない人にも日本製品の魅力をいかに伝えるかが消費拡大のカギになります。
3か国・地域ともに外国製品の情報収集にネットを活用しており、新商品との出合いもECやメーカーのウェブサイト、SNSを通してがほとんどです。図表5でご紹介したように、今回は訪日時の買い物について詳細な品目まで調査しました。訪日客の購買意欲をさらに高める情報発信や、インバウンド戦略⽴案のお役に⽴てれば幸いです。
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