2025.11.17
暮らし
Vol.238 値上げと生活防衛に関する意識調査
生活防衛に走る消費
~ 95%が「物価上昇を感じる」なか、消費行動の変容を探る ~
国内1,500社超が利用する日用品流通の情報基盤を運営する株式会社プラネット (所在地:東京都港区、代表取締役社長:坂田政一) は消費財や暮らしにまつわるトピックスをお届けする 『Fromプラネット』 の第238号として、値上げと生活防衛に関する意識調査(対象4,000人)の結果をご紹介します。未掲載のデータ提供や当社担当者が解説を差し上げることもできますので、お気軽にお問い合わせください。
※回答率(%)は小数点第2位以下を四捨五入し同第1位までを表示しています。そのため、内訳の合計と表示値が異なる場合があります。
バックナンバー https://www.planet-van.co.jp/news/from_planet.html
95%が「物価上昇を感じる」 家計「引き締め」が多数派
2021年後半から始まった物価高の波は、私たちの生活に大きな影響を及ぼしています。毎月のようにモノやサービスの値段が上がり、「スーパーで普段通りに買い物したら、会計の際にビックリした」「我が家の定番品がことごとく “ステルス値上げ” (値段は同じでも内容量が減った、実質値上げ)されている…」などは、誰もが感じていることでしょう。あらゆるモノ・サービスの価格が上がる現状をどう捉え、対応しているのか、今回の調査ではさまざまな角度からたずねてみました。(2022年7月公表のVol.184、2023年9月公表のVol.212でも類似テーマの調査を実施)
まず、最近1年間での物価上昇の実感についてたずねた結果が図表1です。73.4%と4分の3近くが「非常に感じる」と回答。「やや感じる」と合わせると実に95%にのぼりました。年代別では、「非常に感じる」の比率は20代49.7%と半数程度なのが、30代60.7%→40代69.8%と年代が上がるごとに約10ポイントずつ上昇し、50代では79.2%と最高に。「やや感じる」を加えると60代が98.4%と最も高くなりました。
次に、品目別に価格変化の実感をたずねてみました(図表2)。「とても値上がりしている」が83.2%と断トツなのは、日本人の主食である “米”。昨年夏以降、“令和のコメ騒動” と言われるほどの供給不足と価格高騰が比率を押し上げたのでしょう。“米以外の食料品が”66.2%、“外食費”も46.4%と、食事関連の値上がり実感が大きい傾向にあります。「水道光熱費」や「ガソリン」は補助金の効果もあってか、他品目に比べて値上がり感は低めになっています。
物価高の情勢下、家計をどのように運営しているのかも気になるところ。図表3で示したように33.9%が「以前と変わらない」としましたが、「引き締めている」(「どちらかというと」を含む)が60.3%、「緩めている」(同)はわずか5.9%に。家計運営に苦慮している様子がうかがわれます。
高まる家計収支への意識、管理方法は意外と古典的?
家計運営について少し深掘りしてみましょう。家計の収支(収入と支出のバランス)については(図表4)、「以前も今も意識している」が54.1%、物価高を受けて「ここ数年は意識している」人も28.9%と、合わせて8割強が少なからず意識しているようです。片や、「意識していない」(「ここ数年」+「以前も今も」)が17%というのは、意外に高い印象もあります。年代別では、図表1の物価上昇実感と同様に年代が上がるほど収支への意識が高まる傾向に。「ここ数年は意識している」が各年代で3割前後と差が少ないのは、年代を問わず、ここ数年で物価高に対する警戒度を高めたという様子がうかがわれます。「意識していない」の合計が20代で35.5%と高位にあるのは、就職などで自由になるお金が増えた、両親と生活しているため物価高を感じにくい、なども背景にありそうです。
家計の収支を意識している人に、その管理方法をたずねたところ(図表5)、古典的な手法である「家計簿をつける」が最多の32.2%と、「家計簿アプリ・ソフトを使う」13.6%を大きく上回りました。家計の情報をネット上で管理することに抵抗感を持つ人も多そうです。明細やアプリの活用では、「クレジットカード」は男女とも約3割で同水準ですが、「銀行口座」は男性、「バーコード決済」は女性が高いのは興味深いですね。一方、男性の4分の1、女性の2割弱が「収支の把握・管理はしていない」と回答しました。
女性は買い物時に “お得感” をより意識
買い物の際、具体的に何を意識しているのでしょうか(図表6)。56.8%と最多だったのは、基本ともいえる「価格がより安い店で購入する」。以下、「値引き品や見切り品を購入する」46.3%、「ポイントがたまるアプリやカードを使う」39.1%がベスト3に。男女別では全般に子育て世代を中心に女性が高値を示す傾向があり、なかでも「ポイントがたまるアプリやカード」は広範な年齢層、「値引き品や見切り品を購入」は壮年~シニア層、「まとめ買い」や「アプリや広告のクーポンを使う」は若年~壮年で高位となっています。“お得感”に力点を置く傾向が強い一方で、「必要なものだけをこまめに買う」「購入量を減らす」といった行動様式を変化させた人も3割前後にのぼるなど、さまざまなことを意識して買い物していることがわかります。
買い物以外では「外食」「外出」を減らす、ポイントはどう使う?
日常的な買い物以外で、どういった物価高対策を行っているかについてもたずねてみました(図表7)。トップは「外食を減らした」35.5%。調理の手間はかかるとはいえ、支出削減効果は大きそうです。2位は、お金を使う機会自体を遠ざける「外出を減らした」25.9%、3位は、1回の支出額が大きい「旅行やレジャーを減らした・延期した」21.2%が続きました。“減らす系”が上位に顔を並べるなか、「貯蓄や資産運用を始めた・増やした」11.5%が6位にランクインしています。余裕資金を活用して、NISAなども使い「お金に働いてもらおう」と考える人も多いのでしょう。男女別では、女性は「外出を減らす」「不用品を売る」、男性は「耐久消費財の購入をやめた・延期した」「趣味を減らした・やめた」が高い傾向がみられました。
図表6で買い物の際にポイントを意識している人が4割に上るなか、獲得したポイントの用途を2年前の調査(23年5月公表)と比較してみました(図表8)。トップは前回同様に「日常的な買い物に使う」76.0%で前回比6.3ポイント上昇しました。これに続くのが「ポイント運用する」20.3%で同6ポイント上昇と、ここでも“運用”に着目する人が増えているようです。3位以下はいずれも前回調査より低下しており、特に「電子マネーに変換」と「商品券・クーポン券、航空券などに交換」が大幅低下。ポイントで直接支払う行動が定着したのか、交換の手間を惜しむ人が増えたのか、興味あるところです。
“安く” “少なく” の買い物傾向はまだ続く?
今後の品目別の消費意向についてもたずねてみました(図表9)。全品目で価格・量ともに「現在と同じ・同程度」が最多となっており、現状から大きく変化させない人が多数派のようです。購入価格が“現在より安価”および購入量が “現在より少なく” に着目すると、“米”や“米以外の食料品” “日用品”は価格・購入量ともに低減する意向の人は25%前後と差がありませんが、“電気代”と“ガソリン代”は購入量が10ポイント以上上回ります。電力については小売りが自由化されたとはいえ、食料品や日用品ほど選択肢が豊富ではないこともあり、“同じ購入先から少なく買う”という行動になるのでしょうか。“外食” “衣服・服飾品” “旅行・レジャー”は、購入価格・量ともに低減意向が強く、不要不急の消費を抑える傾向はさらに強まりそうです。
物価高への対応はまだ可能?
最後に、最近の物価上昇に感じることや、具体的に講じている対策などを自由に答えてもらいました。今の価格状況を反映して、米を中心に食品に関する意見や工夫が多くみられました。消費行動自体を見直した人も少なくないようです。楽しみである外食や趣味、旅行などを縮小させた・させる意向という声も多く寄せられましたが、“節約疲れ”や、現状を嘆く悲痛な声もありました。
《 最近の物価上昇に感じること、値上げ対策として実施していることなど 》
- 【米・食品の高騰!どう対処?】
- ● お米が高いので食べなくなった。安い小麦粉を購入して米の代わりに食べている。(男性・70代以上)
- ● 米含む食事としての食糧品は値上げしても購入する量や質は変えず、お菓子などの食べなくてもいい食品を減らすようにしています。
(女性・50代) - ● これまでは輸入米は敬遠していましたが、食べてみたら味は遜色ないのかなと思うので、これからもどんどん買っていこうと思います。
(男性・50代) - ● お米をスーパーのポイント還元率の高い日に購入して、ある程度貯まったら高価な商品購入の元手にしている。(男性・40代)
- ● 食料は絶対食べられる量を買うようにして、多いものは小分けして冷凍にし、すべて消費する。(女性・60代)
- ● 米や食品など生活に不可欠なものは値上がりしても購入量を減らすのには限界があるので、食品は同じものを買う分、日用品は厳選したり安いものを探したりするようになった。(男性・30代)
- 【外食、外出、趣味…さまざま“あきらめる”】
- ● 趣味や娯楽はポイ活で得たポイントだけを使う。(女性・20代)
- ● 大好きだった観劇や旅行、外食を止めています。家庭菜園で野菜を育てたり、テレビを観ながらお茶の時間を楽しんでおります。行動範囲縮小です。(女性・70代以上)
- ● もはや引きこもりに近い生活をしている。外食などとんでもないことでゼロに等しい。苦しいが、体重が落ちるなど利点もあった。
(男性・70代以上) - 【まだ節約可能?もう限界?対策として投資も増やす】
- ● 必要最低限のもの以外はあまり購入せず、新しいものを購入する時も、以前は何も考えずに買っていたが、現在はなるべく安価な物を購入する。(女性・20代)
- ● 新聞の折り込みチラシをよく見るようになった。(男性・50代)
- ● 旅行費用を抑えるため、「陸マイラー活動」に力を入れて、特典航空券を利用するようになった。(男性・60代)
- ● もう購入額を増やさない「我慢」で購入額を増やさないのは無理な段階に入った。まだ「我慢」という対策はするが、もうできることはない。
(男性・50代) - ● 対策したいが子供もお金がかかる時期。仕方ないとあきらめています。気持ち節約を意識して生活していますが、あまり効果はないかと。
(女性・50代) - ● インフレ対策として、株式、金、仮想通貨などに分散投資をしている。(男性・50代)
- 【物価高の状況だからこそ】
- ● 将来の収入と支出を見越した未来の家計簿をつけて、物価上昇も見込んだ老後までのマイルストーンを作成して差分を可視化。(男性・50代)
- ● 締める所は締めて、譲りたくない所は今まで通りにする。でないと、ストレスが溜まる。(女性・40代)
- ● なるべく現状維持に努めつつ、安い方に代替しても問題ないのはそうする。ただ、あまり節約ばかりではつまらないし、いよいよ経済が回らなくなる遠因になるからほどほどにして、日本の製品を優先して利用するようにしています。(男性・50代)
調査機関:株式会社プラネットによる調査企画をもとに、株式会社ネオマーケティングにて「値上げと生活防衛」に関する意識調査を実施。
期間:2025年9月26日~29日、インターネットで4,000人から回答を得ています。
- ■株式会社プラネットとは https://www.planet-van.co.jp/
- メーカー、卸売業、小売業がサプライチェーンとして連携し、生活者へのサービス向上を目指して進化を続ける日本の消費財流通を、情報インフラ運営で支えている上場企業(証券コード2391)です。
- ■ From プラネットとは https://www.planet-van.co.jp/shiru/from_planet/index.html
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