公園設計に込められた平和への願い
あの日――8月6日が、また近づいてきます。広島の夏に思いを寄せるとき、目に浮かぶのは静かにたたずむ原爆ドームの姿です。世界遺産には、公式の分類ではありませんが、通称「負の遺産」と呼ばれるものがあります。ポーランドのアウシュヴィッツ・ビルケナウのほかに、原爆ドームもそのひとつです。
チェコ人の建築家ヤン・レツルが設計し、1915年に広島県物産陳列館として誕生しました。当時はモダンな洋風建築として注目され、広島の顔のような存在でした。1945年、原爆投下で内部は壊滅しましたが、外壁の一部が奇跡的に残ります。核兵器廃絶と恒久平和を願うシンボルとして、1996年に世界遺産に登録されました。
ところでドーム、慰霊碑、資料館が南北一直線に並んでいるのをご存じですか? これは戦後の平和記念公園整備にあたり、建築家・丹下健三が描いた軸線です。「平和は与えられるものではなく、創り出すもの」という彼の思想が込められています。
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原爆ドームの基本情報
■分類:文化遺産 ■登録年:1996年 ■所在地:広島市中区大手町1-10
■アクセス:広島駅南口から路面電車 20分「原爆ドーム前駅」下車
■最新の情報は以下よりご確認ください。
ひろしま公式観光サイト https://dive-hiroshima.com/feature/world-heritage-dome/
監修・文 本田陽子
世界遺産ライター・解説者。「日本の旅侍」副編集長。50カ国、200カ所の世界遺産を訪問。世界中の文化や自然に触れた経験をもとに、各地の魅力や最新情報を伝えている。「絵本のようにめくる世界遺産の物語」(昭文社)監修、NHK出演など。