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インバウンド研究会

第3期インバウンド研究会

2019年4月~2019年7月まで全4回開催

第3期では、「インバウンド購買に関するメカニズムの研究」をテーマに設定。インバウンド売上拡大に必要な施策のための仮説を立て、フィールドワークの実施や代理購買を行うソーシャルバイヤーへのインタビューなどを通して検証を行いました。

第3期インバウンド研究会 参加企業(メーカー7社、卸売業1社、企業名は五十音順に記載)

・ メーカー :
アース製薬株式会社、エステー株式会社、大島椿株式会社、花王株式会社、小林製薬株式会社、大日本除虫菊株式会社、
ライオン株式会社


・ 卸売業  :
株式会社井田両国堂

【 第3期 研究会の活動 】

第1回 研究会

2019年4月10日(水)


■キックオフミーティング、仮説設計
 参加者が3つのグループに分かれ、各社の課題を元にインバウンド売上拡大に必要な施策のための仮説を立てました。各グループの仮説と対応策は以下の通りです。
●グループA:中国国内にニーズがあることが大切
その商品の認知度を上げるためにSNSやアプリなど多くのチャネルを使い、長期間プロモーションを続ける。
●グループB:使い方がわからず売れていないことが多い
使用シーンの動画を作り、口コミから認知度を上げる。ドラッグストアや在日華僑の実小売店などの販路も確保する。
●グループC:商品を体験してもらう機会の提供が大切
試供品をフォロワーの多いキーオピニオンリーダー(KOL)に配ったり、サンプルを配布したりして、消費者の心に届く口コミを起こしてもらう。


第2回 研究会

2019年5月15日(水)


■ソーシャルバイヤーに聞く
 中国のソーシャルバイヤー(SB)を招き、代理購買・転売の仕組みや、中国の電子商取引法の影響と実態などを聞きました。
 日本のメーカー側の視点と中国のSB側の視点の違いに大きな気づきがあり、一口にSBといっても実際には以下の3つのゾーニングがあることもわかりました。
▪本土SB(中国在住で中国の顧客とリアルな接点を持っている)
▪在日SB(日本在住の個人:約45万人)
▪在日企業(売上5億円~200億円まで規模は大小様々)

SBとの質疑応答の主な内容は以下の通りです。
●日本側からの質問
(電子取引法の影響について)
▪どこまで落ちるのか?
⇒数字的には2019年春先で下げ止まっている。グレーゾーンの郵便での送付などは大幅減少している。しかし、きちんと関税を払っている中規模から大規模事業者には、かえって注文が集まってきている。

▪SBの数は減っているのか?
⇒在日中国人で45万人いると言われているSBだが、個人レベルでの店頭購入、郵便発送の事業者は、今回の電子商取引法で相当数淘汰されると思う。

▪中国での小売販売価格についてコントロールできるのか?
⇒ナショナルブランド(NB)で多種多様なルートで中国に商品が入り込んでいる商品についてはコントロールできない。ただ、越境用に開発した商品に対して、日本側で中華系代理店と契約すれば、コントロールは可能。

▪登録書は皆持っているのか?
⇒現実的な登録書というものは存在していない。日本でいう事業者番号などがそれにあたるかもしれないが、きっちり定義はされていない。ただ、企業別に(スコアリングのように)国が管理しているので、不正が続き指摘を受ければ、退場となることを事業者は恐れている。ただ、いきなりアカウントを消されたような話は表には出てきていない。

▪SBによる商流の今後の見通しについて。
⇒仕入形態がより川上に移行する。中国プラットフォーマーが、日本メーカーからの仕入に動くだろう。そんな中、日本有名ブランドの中国OEMのセカンドライン的な商品も出てくると予測される。

▪SBによる商品選定の基準は何か?
⇒答えは単純明快で、中国越境EC(タオバオなど)で売れている商品からの予測。日本で売れている商品。より安く仕入れができる商品。ある程度数量が手配できる商品。日本側SBの大事な役目は、次の売れ筋を早く探すこと。判断基準としては、これと思った商品のサンプルを中国側SBに配布しての反応などで判断している。最近、注目しているアイテムとしては、高齢者用、あるいは子供用の健康食品、高齢者用アイテム、子供用品、美容系アイテム、マタニティ系は、まだまだ可能性があると感じている。

▪中国市場の情報はどのように入手しているのか?
⇒プラットフォーマーの売れ筋データは高額だが入手できる。現状は、中国側SBからの要望が生の情報である。つまり、中国本国の消費者の要望だ。

▪売るためにどのようなPR施策をしているのか?
⇒基本、中国の広告企業にプロモーションを委託している。手法は、インフルエンサー、動画配信、ポップアップ広告などがメイン。最近では、日本側の華僑商社が中国広告企業を買収した事例もあり、日本側華僑商社の存在感が増している。

▪プロモーションするにあたって、どのくらいの期間種まきが必要か?3~6カ月位?
⇒ある程度の継続は必須。結果が出るのは、使うKOLやタイミングによるので一概に期間は特定できない。3カ月で結果が出る場合もあるし、1年かけても出ない場合もある。そこが難しい。

▪KOLやSNSの使い方について知りたい。
⇒そこは中国側の広告企業が担当しているので詳細はわからないが、「どこのプラットフォームに載せるか」「何を売るか」「ターゲット層はどこか」などによって手法は変えているはず。有名なKOLを使い、タオバオにサイトを作り、広告にそれなりのコストを掛けたから大丈夫というわけではない。どんどんトレンドが変わる中国国内のことは専門性のある中国広告企業に任せるべきと考えている。

▪どの位コストをかけてPRしているのか?
⇒ピンからキリまである。一例として、ダイエットサプリメントの場合、2~3億円売るのに2000~3000万円。本年度は2億円以上かける。予算は20~30億円。新ブランド立ち上げ期は、売上予算の10~15%くらいが妥当ではないかと考える。もちろん軌道に乗れば、その比率は大幅に下げることは可能である。


第3回 研究会

2019年6月27日(木)


■街頭フィールド調査
 仮説を元に、東京・浅草で訪日ゲストを対象にアンケート調査を実施し、中国をはじめとする23カ国・100名以上の回答を得ることができました。この結果を第4回研究会での考察材料としました。
調査の概要は以下の通りです。
●調査の狙い
▪調査内容項目の理解と考察を得る
▪自社単独調査企画への気づきと改善点の提供
●調査内容
▪訪日ゲストとその国・地域において、対象アイテム(「Japanese Everyday Goods」「Japanese Personal Care Goods」「Japanese Cosmetics」の3カテゴリー)に「Needs、Wants」があるか?
▪メーカーが提供する「体験」により、購買意向を変化させることができるか?
●調査手法
▪街頭アンケート⇒体験への誘導


第4回研究会

2019年7月17日(水)


1.研究成果発表
 今期第1回~3回の研究会を振り返るとともに、集積したデータや知見を分析し、最初に立てた仮説を検証しました。

■グループ発表
●グループA
 調査対象商品について、ニーズがある(41%)と、興味がある(39%)を合わせて80%が好印象を持っているにもかかわらず、認知度は16%しかなく、そのギャップをいかに埋めるかが課題。つまり、認知度の向上施策が重要であることがよく理解できた。店頭は重要ではあるが、そこでの認知度向上はやはり体験の提供だと考えられる。

●グループB
 化粧品、日用品共に、体験することで商品購入意欲が高まることがわかった。用途がわかりやすく、パッケージで伝わりやすい化粧品と、商品ごとに用途が様々で、パッケージだけでは伝わりにくい日用品の差は、あまり見られなかった。
 パッケージに日本語が多い日用品でも、体験により購入意欲が高まることを考えると、言語よりも体験、商品訴求が大事だと考えられる。日本製品の主戦場がECとなる中国をターゲットにする場合、「イラストによる商品の使い方の説明をEC上に掲載することが大事」という結論に至った。 インバウンドの顧客はすでに自国でもシームレスに商品を購入しており、現地店舗/越境ECも含めた「外国人に商品を販売すること」に関する研究に拡げる必要があるのではないかと考えた。

●グループC
 調査対象について、「興味がない・ニーズがある」と答えた人のうち「購入したい」を選んだ数字から、体験によるポジティブ変化度を見た。 体験は購入動機の提供に大きく寄与することが実証できた。
 次に、商品を知らない人のうち「興味がある・ニーズがある」と答えた人の割合から、商品の売れる可能性を考えた。使い方や効能を理解すれば、売れる可能性があることがわかった。

2.参加者の声
 第3期研究会の総括、気づきとして次のような意見が出ました(一部)。
▪他社の参加者もインバウンドに対して同様の悩みや課題を抱えていることがわかり、安心した。
▪商品を知ったきっかけは日本の店舗や自国の店舗が多かった。商品を認知してもらうためには、店舗での工夫が重要であることを再認識した。
▪「買物」が主目的の観光客は少数と思われる。「体験型の買物」がより重要と感じた。
▪効能・使い方をしっかり伝えることの重要性がよくわかった。
▪調査で生の声が聞けてよかった。外国人は熱心に商品説明パネルを見てくれていた。
▪「商品を知らなかったが使いたい」という人が多くいることがわかり、そういった層にアピールしていきたい。
▪購買への影響まで触れられず、メカニズムの解明という点で達成度は半分。
▪ソーシャルバイヤーの話が刺激になった。
▪インバウンドを伸ばすために、越境ECにも取り組んでいかなければならない。
▪色々なアイデアが出る良い機会となった。

3.まとめ
■株式会社USPジャパン 新津研一氏 講和
●インバウンド購入メカニズム解明はまだ道半ば

 日本の地方都市へも海外からLCCでダイレクトにつながり、訪日ゲストにとって日本の地方都市も身近になってきている。思わぬ商品が地方都市から売れてきている姿 (True Data社発表)も紹介された。調査結果やマスコミを通じて、消費者はシームレスで商品を購入している姿が浮かんできた。旅先での購入(インバウンド)、自国小売店での輸入品の購入、そして越境ECと様々な選択肢の中からセレクトしているのである。そして、メーカー側も現地生産、ライセンス生産、直貿易、越境ECなどと、流通も多様化してきているのが現実である。
 日本人向けのマーケティング手法は、ターゲティング、メーカーやブランドのポジショニングなど、ほぼ解明されていると言えるが、インバウンドにおいては、そのポジショニングの軸の設定も決まっていないのが現状である。第3期研究会では、「インバウンドの購入メカニズムの解明」という究極的ともいえる課題解明に取り組んだ。試行錯誤の中、ソーシャルバイヤーインタビューや調査内容を設計して、実際に浅草で調査を実施・分析してきた。
 本日の各社の結果発表を聞いていて、「体験の提供の有効性」「日本商品の潜在的可能性の高さ」「中国以外の国籍でも十分戦える手ごたえ」などを感じることはできた。ただ、残念ながらまだまだトライ&エラーを繰り返さなければ、「購入メカニズム解明」と発表できるとことまでは到達できなかったと言えよう。
●基準がないことが課題
 この度、日本政府観光局(JNTO)が、外国人向けウェブサイト制作マニュアル「外国人旅行者を魅了するウェブサイトの作り方(英語実例集)」を、長い年月と多額の費用をかけて作成した。今更という内容も含まれているが、よくできているので参考にしてほしい。このマニュアルの最後にサイト作成のチェックリストが添付されていた。チェックポイントが簡潔にわかりやすくまとめられている。
 我々もインバウンド施策に関するマニュアルやチェックリストを作ることが必要かもしれない。「(外国人向け)キラーコンテンツとは何か」「疑問点はまず外国人に聞け」「日本語翻訳はNG、ライティングはネイティブで」など、この研究会だけでも多くの事実を掴んできた。それらをまとめることで、インバウンドの基本セオリーのようなものが見えてくるのではないだろうか。次の大きな課題の一つと言えよう。インバウンドだけでもまだまだやるべきことは多いと感じた。

■株式会社プラネット 代表取締役社長 田上正勝 コメント
 当社では中国のアリババが展開するスーパーなどの海外流通の実態調査も続けているが、その変化のスピードはすさまじい。マーケットが世界規模になってきている現状では、日本メーカー各社が一緒になってインバウンドや越境ECに取り組んでいかなければ競争には勝てない時代になってきていると感じている。
 このインバウンド研究会では、メーカー各担当者同士がつながり、一緒に作業するという貴重な機会だと感じている。来期も続けていくので、ぜひご参加いただきたい。

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