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インバウンドセミナー

コロナ禍でやるべきインバウンド対策 -身近にあるグローバル-

⼀般社団法⼈ジャパンショッピングツーリズム協会 代表理事/事務局長
株式会社USPジャパン 代表取締役社長

新津 研⼀

株式会社グローバルパワー 代表取締役
竹内 幸一

約300万人の在留外国人は日本が好きで日本に暮らす

新津
外国人は大きく3つに分けられます。「外国にいる外国人」「外国にいて日本に来る外国人」、そして「日本にいる外国人」です。コロナ禍によるインバウンドの急減をきっかけに、消費の担い手としての「日本にいる外国人」の存在感が増しています。インバウンドがなくなったことで外国発行のカード利用はゼロになると予想されていましたが、結果は半減ぐらいとの話もあります。それだけ日本にいる外国人の利用が多かったということです。百貨店の売上が一定程度維持されているのも、同様の理由と見られます。
外国人は一緒に働く仲間としても大切な存在です。こうしたことを踏まえ、今日は「身近にあるグローバル」というテーマで「日本にいる外国人」に着目し、その事情に詳しい竹内さんにコロナ禍の今できるインバウンド対策についてお話をうかがいたいと思います。
まずは竹内さんが代表を務める株式会社グローバルパワーの事業内容について教えてください。
竹内
日本には2019年末現在、293万人もの外国人が住んでいます(在留外国人)。当社は、その中のいわゆる高度人材に特化した紹介・派遣事業を手掛けています。
外国人が日本で暮らす理由は今と昔とで全く違います。十年前は出稼ぎのための人が多かったですが、今は自国で働く方が収入を得られます。ではなぜ日本に住んでいるのか。結局、みんな日本とアニメなどの日本の文化が好きなんです。そういった方々に日本社会の中でもっと活躍してもらいたいという想いで「日本に住む、日本語が堪能な優秀層の外国人人材の派遣・紹介事業」を行っています。

東京オリンピック・パラリンピック開催を前提にインバウンド回復は目前

新津
本題に入る前に、インバウンドの現況について私から説明させていただきます。
新型コロナウイルスの感染拡大により外国人観光客は99.9%減となり、東京オリンピック・パラリンピック(以下オリパラ)は延期されました。状況が一変した現在、「インバウンドはいつ回復するのか?」「2021年にオリンピックは開催されるのか?」とよく聞かれますが、オリパラは開催されると思います。
国や都、組織委員会は開催を前提に準備を進めています。新型コロナの感染拡大防止のために実施されている規制も解除されはじめており、スポーツイベントは最優先で満員開催がOKとなりました。
インバウンドについてもオリパラ開催を前提に受け入れ準備が進んでおり、回復は目前と思った方がよいでしょう。
先日、日本政府観光局(JNTO)にヒアリングしてきました。政府は、外国との往来について「ビジネス→留学→観光」の順で再開し、国別に緻密にコントロールしながら往来を再開する考えのようです。すでに国別ではシンガポールからの入国制限が解除され、9月に「ビジネストラック」の運用が開始されました。10月には韓国のビジネストラックも再開されています。先頃は中国とも往来再開で合意したと報じられました。現在は留学がいつ開始されるのかという段階です。
JNTOは国内のコロナ対策の状況、コロナを踏まえた日本人の観光の傾向など、海外向けの情報コンテンツの発信準備を進めています。
インバウンドが回復するには、まずは国内の観光需要が回復しなければなりません。その意味でGoToトラベルの効果も期待されます。

就労が認められている在留資格の6割以上が通称「技人国」

新津
労働の担い手としての在留外国人についてうかがいます。インバウンド需要の取り込み、グローバル化の対応という意味で、もはや外国人の人材は日本企業の成長に欠かせない存在です。ただ、いざ日本企業が外国人を雇うとなると、ビザの問題などいろいろ気になることも少なくないと思います。
竹内
みなさんには、日本にいる外国人について基本的なところを知っていただきたいです。
外国人が日本に滞在するためには「在留資格」が必要です。ビザと在留資格を混同されている人が多いですが、それぞれ違うものです。外国人はビザがあれば日本の空港までは来られますが、在留資格があって初めて日本に滞在できます。
在留資格は全部で29種類あり、次の4つに分類できます。
①就労が認められている在留資格
②身分・地位に基づく在留資格
③就労が認められない在留資格
④就労の可否は指定される活動によるもの(特定活動)
 
①のうち、6割以上を占めるのが「技術・人文知識・国際業務」、通称「技人国」と呼ばれる学術的専門知識を使う資格です。この資格を持つ外国人は国内に30万人以上おり、そのうちの4万3000人が当社に登録しています。

今がチャンス 超・買い手市場の在留外国人採用

新津
在留資格は複雑多岐にわたるのですね。将来が見通せない状況で、外国人の新規雇用を今やるべきことか疑問に思う方もいらっしゃると思います。どのようにお考えでしょうか。
竹内
「今がやるべき時」だと思います。これまで外国人の人材は売り手市場でしたが、コロナをきっかけにインバウンド関連の求人が激減し、今は超・買い手市場です。日本に住む、日本語が堪能な優秀層の外国人を採用できるチャンスだと思います。
中でも注目していただきたいのが「特定活動46号」と呼ばれる在留資格です。4つの在留資格のうちの④に分類されるもので、日本の4年生大学卒以上の外国人を対象に2019年5月に新たに創設されました。これまで外国人留学生は、日本の大学を卒業して、採用試験に合格し、就職できたとしても、在留資格は得られませんでした。特定活動46号は、卒業後も日本で働ける在留資格です。
先述の「技人国」は専攻科目以外の仕事が認められないなど、仕事の内容が限られます。特定活動46号ではこうした制限はなく、日本人と同様に、さまざまな部署や職種の経験を積むことで外国人労働者のキャリアを育ててられます。
新津
日本でグローバルな人材を活用できる、活躍してもらえる土壌はすでに整っているということですね。

在留外国人ならではの視点をインバウンド攻略に活かす

新津
在留外国人の消費者としての側面についても教えてください。彼ら・彼女らの「外国人の視点」はインバウンド攻略の意味でも見逃せません。こうした視点の参考になるのが、グローバルパワーの「外国人名言集@GLOBALPOWER」というツイッターアカウントです。アカウントのプロフィールには「『日本はスゴイ!』『日本はヤバイ!』という外国人のみなさんの名言」とありますが、どういったものでしょうか。
竹内
当社のスタッフは在留外国人と仕事の希望について徹底的に話し合います。そうしてコミュニケーションを重ねる中で、日本人にとって意外であったり、興味深かったりするコメントが沢山出てきます。在留外国人のこうしたコメントをツイッターボットでつぶやいています。
例えば、ネパール出身男性のコメントに「ヒンズー教では牛は食べられませんが、日本にいる牛は神様ではない。だから毎日『牛角』に通っています。牛角最高!」とあり、別のアメリカ出身女性は「アメリカでは赤は男の子の色。女の子に赤の服をすすめると『やだー』と言います」とコメントしています。ヒンズー教徒でも実は牛が食べられるという視点や日米のジェンダー感覚の違いなど、意外性がありますね。
新津
私が興味をひかれたのは、タイ出身女性の「タイの大戸屋に行ったけど味が薄い。もうちょっと濃い方がタイ人受けすると思う」という言葉です。こうした外国人の味覚の機微は日本人にはわかりません。アメリカ出身男性の「お酒の後のサンドイッチがやめられない」。この感覚も日本人にはあまりないと思います。
こういう日本人の常識と外国人の常識の狭間にビジネスチャンスが転がっているんでしょうね。
竹内
外国人のニーズがわからないとインバウンドの売上も伸びません。彼らの感覚はもっと学ぶべきだと思います。
新津
日本人の思い込みをリセットするには、在留外国人の話によく耳を傾けることが有効ということがよくわかりました。こうした「名言」を発している在留外国人は半分「日本人化」していると考えてよろしいでしょうか。
竹内
当社に登録している外国人の多くは、日本語能力試験で一番上のランクのN1以上を持っていて、日本文化にも精通しています。おっしゃる通り、半分くらいは「日本人化」しているかもしれません。
新津
「日本人化」しているからこそ、こうした日本人と外国人のギャップの面白さがわかる。日本の文化も外国の文化も両方わかる。ここが本当にすばらしいと思います。
竹内
インバウンドが再開すれば、日本と外国の架け橋となってくれる優秀な外国人の人材は再び売り手市場になると思います。だからこそ、今はいち早く仲間にしてもらいたいと思います。外国人の採用でお困りのことがあれば、いつでも気軽に当社にお声がけください。
新津
本日はありがとうございました。