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プラネットユーザー会2017

『流通の次世代を語る会』からのご報告

プラネットユーザー会2014のパネルディスカッションをきっかけに、卸売業、メーカー相互のより深い理解と円滑なコミュニケーションの実現を目的とした『流通の次世代を語る会』が発足した。会に携わった4名の方にご登壇いただき、約2年間にわたる活動についてご報告いただいた。

登壇者
小林 洋 氏

サンスター株式会社

登壇者
山見 宏史 氏

株式会社PALTAC

登壇者
西村 良恵 氏

ユニリーバ・ジャパン・カスタマー
マーケティング株式会社

コーディネーター
田中 伸治 氏

カストプラス株式会社
代表取締役

(PLANET vanvan 2018年冬号(Vol.117)掲載記事より)

『流通の次世代を語る会』に参加して

田中 2014年のユーザー会でパネルディスカッションを行い、環境が変化する中、卸売業とメーカーはもっと協力して何かできるのではないかという話からこの会が発足した。卸売業6社12名、メーカー10社39名、合計51名が参加し、8回の会合と卸売業の物流センターの体験視察およびメーカーの工場の実状視察、あわせて10回の集まりを開催した(表参照)。まず、この会に参加した感想をお聞きしたい。
山見 ちょうど3年前のこの場で、メーカーと卸売業の関係性や問題点、お互いの主張について議論し、30年後を見据えた全体最適を実現する必要性が訴えられた。それを受けてこの会を立ち上げ、継続できたことは大変大きな成果だった。参加者を代表して、田中社長(コーディネーター)とパネリストの方々、そして会議を支えていただいたプラネットに厚く御礼申し上げたい。
 8回を振り返ると、初めは未来を語ることに参加者がひるんでしまったり、次世代と現世代の議論が行ったり来たりすることもあったが、この2年間で一貫していたのは、メーカーと卸売業は単なる取引関係という位置づけではなく、顧客満足の最大化を共通の使命とし、それぞれの役割分担を明確にして、その役割をお互いに活用する仕組みを次世代目線で考えようということだった。とくに物流や商談、SCMの各領域に共通したキーワードとして、リアルタイム化に代表されるITの活用が印象に残っている。
 また、日本製紙クレシア様にご協力いただいて実現した東京工場の視察も、非常に貴重な機会となった。
西村 私は入社以来ずっと営業ばかりしていたが、この『流通の次世代を語る会』には、卸売業やほかのメーカーの方々、それも営業だけではなく、物流やITの専門家などさまざまな経験、知識、バックグラウンドをお持ちの方が参加されていた。いろいろな方と、流通業にどんな未来が待っているのかという話ができて、本当に楽しい時間だった。
 商流と物流を分けて考えていたら、流通の次世代を語ることはできないことがわかった。私は物流についての知識がまったくなかったが、卸売業の方々と物流について意見交換し、また、あらた様の物流センターの視察では、荷受けから小売業に出荷するまでのセンター内の作業を全部ご説明いただいた。そこでの気づきとして、たとえば私たちメーカーは、それぞれが自社から卸売業までの物流の最適化を考えているが、じつは各メーカーが違うことをしていると、かえって卸売業側の平準化を阻害してしまうことが理解できた。それは実際に物流センター内の作業を拝見しないと気づかないことだった。本当にいい機会を与えていただいたと感謝している。


未来の商談とSCM

田中 具体的に未来の商談についてはどうお考えだ ろうか。
西村 次世代の商談について、卸売業とメーカーで3回ほどグループワークをしたが、毎回、必然的に未来の店舗、未来の小売業、未来の売り場はどうなるかということに話が推移していった。今は、消費者が店舗に行って、もし欲しい商品がなかったら、その場でインターネットから買ってしまう時代になっている。10年後と言わず、リアルの店舗の役割は変わっていくだろう。
 その中で商談の役割とは何か。今のように商品を置く決定権が販売店にあって、そこに「こんな新商品が出るので置いてください」とお願いするという商談は、10年後には必要なくなるのではないか。それに代わって、「今、この商品を欲しい人がここにいますよ」というように、消費者が「欲しい物を」「欲しい時に」「欲しい場所で」「欲しい値段で」買えるような売り場を提案するのが、未来の商談の姿だと思う。
 そういう意味でも、メーカーの営業の仕事は変わってくるだろう。一つは、ビッグデータを活用して「欲しい時に」「欲しい場所で」「欲しい商品を」消費者が手に入れられるような環境を実現すること。もう一つは、ビッグデータの解析から、消費者自身がまだ気づいていない潜在的なニーズを掘り起こし、「本当はこんな商品が欲しい」ということがわかるような売り場を提案すること。次世代の商談はそんな風に変わってくるのではないかというのが、グループワークで話し合われたことだ。
山見 未来の商談を考えるには、消費者とつながるようなマーケティング、あるいはコミュニティの形成を消費者目線でやっていく必要があるだろう。その中で情報共有された販売計画や、売り場基点のSCMといったものが実現できるのではないか。やはりここでもデータの活用や共有がキーワードとなる。
田中 SCM、CPFRについては、どういった話があっただろうか。
山見 意見として多かったのが、リアルタイムの情報の共有化による効能だ。未来の受発注において、リアルタイム化は欠かせない。その理由の一つとして、リアルタイム化により生産、在庫、販売といった各プロセスが連動して、予測精度の向上が期待できる。たとえばリアルタイムの在庫データを共有することで、効率的な物流計画などに貢献できるだろう。それがリアルタイムの受発注や販売状況の把握の実現を促し、最終的には消費者満足を高めることに貢献できるのではないかという考え方だ。
 そのためにも、物流と在庫、受発注などのしっかりした運用と、小売業、卸売業、メーカーの予測の集結が必要になるだろう。さらに各プロセスで、効果測定基準の策定と利益の適正配分を課題として整理しておく必要がある。
田中 西村さんは、CPFRやSCMをどうお考えか。
西村 専門家ではないが、CPFRとかSCMも商談とは切っても切り離せないものになるだろうと強く感じた。たとえば特売情報とか新製品情報というところで、その商談状況がリアルに情報共有できて市場に供給するというのは、商談と物流の連携になる。究極でいくと、今はチェーンごとに棚割があるが、本当に欲しい物が欲しい所で手に入るようにするのであれば、チェーンごとではなくエリアごととか、個店ごとの棚割の提案をするのが商談ではないかという話も出た。そうすると物流とかCPFRと商談の内容が連携することが、今後ますます重要になるのではないか。


次世代に向けた新たな一歩を

田中 小林さんには、パネルディスカッションから3年間にわたり、ずっとこの会にお付き合いいただいたが、どのような感想をお持ちだろうか。
小林 3年前にパネルディスカッションをやって、その時にどうも最近の若い皆さんは、メーカー、卸売業双方の仕事の内容について、お互いに理解が薄いのではという会話があった。そこで、若手の方に集まっていただいて理解を深める機会をつくりましょうということで、この会が始まった。大変熱心に議論していただき、お互いを理解すればするほど、まだまだできることが見つかってきたという感じだ。
 この30年、流通業界の中では課題に対してできることはやってきた感がある。さらにここから先、IT環境が変わったり、物流環境が非常に厳しくなっていたり、一方で商品認識技術が進むなどいろいろと変化する中で、もっとできることがあるという議論が深まったのは大変喜ばしい。
 議論を通して、できそうだと感じたことのいくつかは、おそらく3年後、5年後には実際にできあがると思う。メーカーに消費者の姿がよくわかる情報が集まるようになると、一人一人に寄り添った物づくりがもっと進んでくる。そうなると、マスで運ぶというより、一人一人にお届けしていく流通が期待される。その中で流通の皆さんは、どうやって無駄なく低コストで最適化された物流を実現するかということにチャレンジしていかなければいけない。そこをないがしろにすると消費者はみんなネットに行ってしまう。そうならないように、いつでも近くのお店に行ったら自分の欲しい商品が買える世界を実現していただきたい。
田中 会に参加して変わったこと、これから変えていこうと思うことがあればお聞きしたい。
山見 最初はみんな、ぼんやりした未来のイメージしかなかったが、会を通じて商談、物流、SCMといったフレームワークが見えてきて、メーカーと卸売業が果たすべき役割が示された。これは着実な一歩だ。ここからさらに次の一歩を踏み出し、点を線に変え、線を面に変えていこうという機運を高めなければいけないと思う。
 もう一つ、この会議の課題として、業界を俯瞰できる人材の育成ということが示されたのも印象に残っている。次の30年に向けて、この流れを新しい世代にバトンタッチしていくことも使命だと感じている。
西村 田中社長に教えていただいたことの一つに、競争領域と非競争領域という言葉がある。これまでまったく意識したことがなかったので、そんなことを考えるようになったのが一番変わったことだ。流通のゴールは、消費者の生活を豊かにすること。その中でメーカーの役割は、消費者が欲しいと思っている商品を開発して、もっといい製品をつくっていくことであり、そこはどんどん競争していく。ただ、それをお届けする流通の最適化については、メーカーと卸売業、あるいはメーカー同士で協力しながら、消費者の生活を豊かにする働き方ができるのだと考えるようになった。そのためにも、これからは自社だけでなく、流通全体をリードしていくというマインドを持って、さまざまな課題を考えていきたいと思う。
田中 全体を総括すると、業界の枠をこえたもっと大きなかたまりとして進むべき道が、この2年間でおぼろげながら見えてきた気がする。そして、それをもう少し具体的に検討し続ける必要があると強く感じた。
 この2年間、参加者の皆さんと議論してきた内容を、①未来のCPFR、②未来の販売・マーケティング、③未来のショッピングという3つの枠組みに集約した。これをベースに第2クールとして、「未来の在庫管理」「未来の店舗」という2つのワーキンググループを、今期中に立ち上げられればと考えている。
 以上で『流通の次世代を語る会』のご報告としたい。