春の情景に宿る富士信仰の祈りと美
富士山を仰ぎ見るとき、私たちは理屈を超えた神聖な心地に包まれます。その圧倒的な山容を目前にして、歌に詠み、祈りを捧げてきた歴史が、この山には刻まれています。
古来、日本人の自然観や日本文化に大きな影響を与えてきたことが評価され、富士山は文化遺産として登録されました。
この神々しい山に、ひときわ華やかな彩りを添えるのが春の桜です。かつて荒ぶる自然神として畏怖された富士山は、時を経て、美しい女神「木花之佐久夜毘売」が鎮座する山として親しまれるようになりました。
一説によれば、この女神が富士山の頂から桜の花びらをまいて、日本中に桜の木が広がったとする伝承があります。それは、厳しい冬を越えた人々を桜の下へ誘い出し、共に語らい、笑顔にするための、女神による麗しき計らいだったのかもしれません。
さて、今度の週末は桜を愛でに出かけてみませんか。もし肩先に桜の花びらがひとひら舞い降りてきたなら、それは富士の女神からの、ささやかな歓迎なのかもしれません。

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基本情報
■分類:文化遺産 ■登録年:2013年
■所在地:山梨県と静岡県にまたがる富士山域のほか、周辺の神社、富士五湖など25資産で構成
■参考となる情報は以下よりご確認ください。
富士の国やまなし https://www.yamanashi-kankou.jp/nature/index.html
ハローナビしずおか https://hellonavi.jp/area/fuji/index.html
文化遺産オンライン(構成資産についてのご案内) https://bunka.nii.ac.jp/special_content/hlinkD
監修・文 本田陽子
世界遺産ライター・解説者。60か国、200か所の世界遺産を訪問。世界中の文化や自然に触れた経験をもとに、各地の魅力や最新情報を伝えている。「絵本のようにめくる世界遺産の物語」(昭文社)監修、NHK出演など。

