株式会社プラネット

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創刊150号を記念し、日用品・化粧品流通のこれまでと将来を語る特別鼎談をお届けします。
お招きしたのは、プラネット創業や本誌創刊と同時代にライオン株式会社に入社し、業界の歩みを見つめてこられた同社アドバイザーの小林健二郎氏。弊社上席執行役員の今村佳嗣、執行役員の上原英智とともに、業界が抱える物流・システムの課題、プラネットが今後果たすべき役割などについて語っていただきました。

メーカー主導で標準化が進展 多様な商品の流通を卸売業とシステムが支える

小林
 私は1987年にライオンに入社しましたが、その2年前にプラネットさんが創業して発注データ、仕入データ、そして販売データはすでに稼働していました。当時は卸売業の数が非常に多く、FAXや電話での発注も多かったので、受注センターにたくさんのオペレーターがいました。それから10年程で全国各地の受注センターは集約されていき、メーカーの間接コストがEDIの普及やシステム化により軽くなるのを実感していました。
今村
 私がプラネットに入社したのは1997年で、大手・中堅はEDIの導入がほぼ完了しており、中小メーカーがこれからという時期でした。ちょうどインターネットがビジネスで使われ出した時代でもあります。
上原
 私は1996年にプラネットに入社しました。当時はBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)といった言葉がはやっていて、先行メーカーの事例を他社が参考にする形で合理化が進んでいきました。
小林
 しかしシステムを共通化することに対しては、当初はもろ手を挙げて賛成というメーカーばかりではなかったと記憶しています。それでも主要メーカー8社が出資してプラネットを立ち上げたことで共同利用の機運が生まれ、流れをつくった部分はあると思います。私はまだ新人でしたが、父(元ライオン会長でプラネット創業にも携わった故・小林敦氏)は情報・物流などインフラの将来性への関心が高く、自動発注や在庫データの共有化まで見通していたようです。
今村
 メーカー主導の業界だったので、メーカーが卸売業に「これから3年先、5年先の業務をこう改善していきましょう」とコンサルティングするような形で進んでいった側面が強かったと思います。
上原
 それに関して言えば、ライオンさんではIMS※1、他のメーカーではCRP※2といわれる取り組みもありました。これは卸売業の在庫を開示してメーカーが自動的に補充するもので、ある程度データが揃ってきたことでこうした物流面での施策が進みました。
小林
 いまお二人からメーカー主導というお話がありましたが、メーカー主導と小売業主導では進み方が違ってくると思います。欧米のように小売業が寡占化している国では小売業主導でシステム・物流が動き、お客様が選択できる売場をつくるよりも小売業が自分たちの利益を最大化する発想になり、プライベート・ブランドも多くなります。一方、日本は中小メーカーを含めて商品が非常にたくさんあり、消費者が選ぶ自由を満喫できている。それを支えている基盤が、中小メーカーも標準フォーマットを共通で使えるシステムがあることではないでしょうか。
今村
 本当にそう思います。2000年ごろから「多様性のための標準化」という言葉をよく使っていました。みんな一緒に同質化するのではなく、非競争領域であるデータやコードを統一化することで大手も中小メーカーも生き残れて、その先に個性を発揮したレベルの高い競争ができるという意味です。
上原
 日本はドラッグストアでも2万点、3万点の商品があって、だから生産性が良くないという意見もあるでしょうが、これが日本の文化なので尊重されるべきですし、それを支えているのが欧米にない非常に高度な機能を持つ日本の卸売業の存在だと思います。
※1 Inventory Management Based Supply(卸店在庫管理型自動補給)
※2 Continuous Replenishment Program(連続補充方式)

業界課題を克服するカギは非競争領域の間接コスト削減

ソリューションを「デザイン」する役割をプラネットには期待します

小林氏
小林
 現状の課題でいえば、人口減少による市場縮小があります。市場成長に向けて客数増が見込めないなら客単価を上げるしかなく、付加価値をつけていくことが重要です。値上げをすべきか否かという議論はありますが、良いものを作って売ることで正当な対価を求め、その利益を再投資するという好循環があるべき姿だと思います。
 一方、いかにコストを下げるかも考えなくてはいけません。その点でプラネットさんは、フォーマットの標準化などによって、本来は我々がやらなくてはならない間接コストの抑制を代替してくださっている面があります。卸売業も物流機能のコストが非常に重荷になっており、これを業界全体で減らしていくことが重要です。
今村
 人口や世帯数の減少は市場縮小につながる一方で、日用品はパーソナル化が進んでいます。ヘアケアでも家族が4人いると一世帯に4本あります。こだわりの強い人も価格志向の人もいて商品の多様性が高まる中で、メーカーが価格戦略の幅を広げられるようになってきたと感じます。ライオンさんが昨年発売された「デントヘルス薬用ハミガキ DXプレミアム」は2千円を超えていますが、以前ならハミガキでこの価格は考えられませんでした。
上原
 メーカーが付加価値の高い商品を開発するには資金が必要ですので、そのためにプラネットができることは、サプライチェーン上のいろいろなムダを取り除いてコストを下げるサポートをすることだと思います。また、卸売業も物流をはじめとするオペレーションコストが下がれば、暮らしの当たり前を変えるような商品の調達や提案にも注力できるようになるはずです。
今村
 卸売業は物流や情報の集約・提供に相当コストをかけており、生産性向上の余地は大きいと思います。どこまでを非競争領域とすべきかは日々の業務の中では気付きづらいと思うので、我々が俯瞰して「ここで競争する必要はありませんよね」とご提案できればムダとムラをなくせるのではないかと考えています。
小林
 例えば医薬品業界は段ボールの単価が20万円、30万円ですが、日用品は3千円、5千円です。運ぶ労力は同じなので、いかに低コストで動かすかを考えないといけません。だからこそ日用品業界ではシステム・物流を研ぎ澄ませてきた経緯があり、卸売業が他に代替されずに残っている理由だと思います。

サプライチェーン全体の在庫可視化で新しい流通の形を描く

上原
 プラネットとしてもまだ描ききれていないのですが、今後の展望として、在庫の可視化を製配販で進めるとメリットが大きいと考えています。サプライチェーン全体の在庫と購買力が見えれば、例えば、エリア別カテゴリー別に購買される量が推測できるので、それに合わせた在庫を保管しておくことで返品抑制にもつながると思います。
今村
 どれだけ在庫があるかが分かれば生産量や物流を調整でき、いま話に出たような新しい流通も生まれてくると思います。
小林
 メーカーと小売業が商談をするときに、リアルタイムで在庫が見えれば「この商品はありませんが、これならあります」という話もできるようになります。小売店の日々の売場にお客様が欲しいものを揃えることが重要であり、的確に商品を供給できる仕組みをつくることができれば売場の価値を最大化できます。
今村
 いま小売業は人手不足で、ドラッグストアに行っても商品があるはずなのに並んでいなくて、上の在庫棚にあったりします。だから他のコストを削減して小売業が店頭に集中できるようサポートすることが必要で、プラネットとしてもそうした社会的意義のあることにはぜひ取り組んでいきたいです。
上原
 私たちのようなビジネスは、EDIやデータを使って何をするかという話になりがちですが、まず人の動きや購買プロセスが存在し、それらをどのように変革していくかという視点があるべきです。そのために必要な情報としてデータを使用したり共有したりするアプローチが求められています。

プラネットだから可能になる業界横断のソリューションプロバイダー

業界の発展には「多様性のある標準化」と「健全な競争」が必要です

今村
小林
 プラネットさんがいま持っているデータは、まだまだ活用する余地があると思います。一つは先ほど話した在庫データ、それから物流データです。国内の日用品の動きのかなりの部分を押さえているため、例えばメーカー間の共同物流に活用するといったことができるでしょう。
 また、商品マスタなどを管理する「株式会社プロダクト・レジストリ・サービス」を昨年立ち上げられましたが、メーカーにとって商品マスタや販売店のデータを管理するのは大変なので、そうした部分を担ってもらえるのは間接コスト削減につながります。
今村
 プラネットは「情報インフラ×ソリューションプロバイダー」を目指すことを掲げています。業界のEDI標準を普及させることからスタートして、いまはプラットフォーマーと呼んでもいいと思います。ソリューションプロバイダーとしての役割はその先にある。単にデータやコードを提供するだけではなく「プラネットのこの機能を使ったから業務が楽になった、別の仕事にシフトできた」という状態を生み出せるのがソリューションです。
 その一環として最近始めたのが「返品ワークフローシステム・サービス」です。電話やFAXによるアナログな返品業務をデジタル化することが目的です。これ自体も一つのソリューションですが、デジタル化すると、どこからどこに何が何個返品されたかという履歴が蓄積されていくので、この情報を使っていかに返品を減らしていくかを考えられるようになります。
上原
 小売店舗、卸売業拠点情報が約52万件(2026年2月末日現在)登録された「取引先データベース」を提供していますが、これは40年前からあるもので、今村も言ったように、これを進化・発展させてソリューションにつなげることを考えなくてはいけません。いま共同物流の動きが出てきていますが、プラネットは小売店や物流センターの情報を持っているので、それを考えるためのマスタ、インフラとしての役割を担える可能性があります。
小林
 日用品だけではなく、食品や飲料との異業種混載も出てくると思います。ライオンも過去にキリンさんと共同物流の実験を行ったことがあります。例えばビールを運んだ帰り便で洗剤を運ぶとか、そうして範囲が拡張されていけば、社会的なムダはどんどん減っていくでしょう。
今村
 個々のメーカーは自社の情報しか見えていないため、誰かが中立的な立場で全てのデータを見てコントロールすべきで、そのソリューションにプラネットらしさが出ると思います。過去のデータが開示されれば日用品の大きな流れが分かり「ここを一緒にすればいいですよね」という提案も可能になって、5台のトラックで運んでいたものを1台に載せるといった効率化につながるはずです。
上原
 卸売業の喫緊の課題は人件費の高騰ですが、ほかにもバックオフィスでの経理作業など、プラネットがお客様と改善していくべき領域はまだまだ埋もれているのではないかと思っています。
今村
 そうした課題を業界として乗り越え、共に発展していきたいと考えています。商品情報連携のために設立した新会社、プロダクト・レジストリ・サービスでは、経済産業省から食品も扱ってほしいという話もありました。食品の情報を扱うのは難しいですが、ノウハウや仕組みを提供することはできるので、日用品だけでなく他業界も含めて日本のサプライチェーンがレベルアップすることに寄与できる可能性はあります。
上原
 プラネットは日用品・化粧品業界のメーカー・卸売業ネットワークの日本第1号、世界的に見ても先駆的な存在です。その後、加工食品、菓子、そして医薬品などの業界にネットワークができました。販売の仕方もまったく異なるため、「餅は餅屋」で商品特性を分かっている人がやる必要がありますが、似たような形で他業界にも波及していけば、確かに日本全体のレベルは上がっていくと思います。
小林
 お二人の話を聞いても期待感が上がってきたと感じます。ただ、もう一つ欲を言えば、ソリューションにとどまらず「デザイン」をできる力がプラネットさんにはあるのではないでしょうか。個々のメーカーが進めると全体最適にならないので、中立的・効率的に全体をデザインする役割が必要になる。顧客のニーズに応えてソリューションを提供するだけでなく、プラネットさん自体がデザインをしてプロバイドしていくことを期待したいです。

培った信頼と相互理解を他業界・官界との間にも広げていく

メーカー・卸売業が本業に集中できるよう、プラネットがサポートしていきます

上原
小林
 プラネットさんが進化していく中で忘れてはいけないのは、これまで培ってきた信頼と相互理解です。冒頭にも話したように発足当時は全員が賛成していたわけではありませんが、それがインフラ化して、現在では無くてはならない存在になっています。これからはそうした信頼と相互理解を、食品などの他業界や経済産業省・国土交通省との間にも広げていくことで、より大きな枠組みでのインフラが描けると思います。
今村
 その通りだと思います。私がプラネットで大事にしているのが「健全な競争」です。日本の日用品・化粧品の品質は世界的に見てもものすごく高いのですが、これまで価格設定は小売業主導で進められてきました。これが健全な競争になれば商品価値に応じた適正価格になり、業界はもっと成長できると思います。そのために我々がインフラを維持して、ソリューション「デザイン」プロバイダーに進化していかなくてはいけません。
上原
 プラネットが変えてはいけないのは、中立的な立場であることだと思います。メーカーばかり、卸売業ばかりというのではなく、中立であるがゆえに、新しい動きが出てきたときにプラネットが取りまとめる役割を担うことができます。

「しなやかな業界」を次世代へ プラネットが果たす役割は大きい

小林
 業界の今後を考えると、いまはいろんな意味で転機だと思います。経済産業省など国も社会的な効率化に目を向けているし、メーカーも業務効率化・生産性向上を目指してERP※3といわれる基幹システムを導入したりしている。これはプラネットさんにとってもチャンスで、メーカーのデータの可視化が進めば、サプライチェーンの上流へのアプローチができるようになります。また情報処理能力が飛躍的に高まったことで、配送ダイヤグラムをAIで検討するといった、これまでの想像をはるかに超えることも可能になるでしょう。ただ、他の企業もそうした構想は持っているはずなので、それに先んじてチャンスをつかめるかどうかが問われてくると思います。
今村
 プラネット自身もベンダーではなく、この業界を支えるプレーヤーの一員だと考えており、その立場からは「しなやかな業界」であり続けてほしいと思っています。ガチガチのルールに縛られるのではなく、例えば災害時などにはみんなで助け合って、業界として次のステージに進んでいけるようなしなやかさは大事です。そして我々は、これから時代が変わっても次の世代にそのしなやかさを引き継いでいかなくてはならないと思います。
上原
 この業界が永続するには市場の拡大が必要で、そのためには付加価値商品の開発や、ライオンさんもメッセージを発信されているように、新しい習慣をつくることがキーになります。新しい習慣ができれば、新しい需要が生まれ、そこにメーカー各社が多角的なアプローチを展開し、市場を開拓していきます。私たちは、メーカー・卸売業が経営資源を本業に集中できるような環境を整えていかなくてはならない。そのためにやるべきことはたくさんあると感じています。
※3 Enterprise Resource Planning(企業資源計画)。会計・人事・生産・物流・販売などの基幹業務を統合し、効率化や情報の一元化を図る


 株式会社あらた・株式会社PALTAC・株式会社プラネットの3社は、株式会社プロダクト・レジストリ・サービス(略称:PRS〈ピーアールエス〉)を設立し、本年4月、サービスの運用を開始しました。PRSは、日用品・化粧品などの一般消費財における商品情報を一元管理し、メーカー・卸売業・小売業が共通で使えるデータ基盤を提供します。

 設立の背景には、労働人口減少による人手不足、EC拡大で増える商品データ、取引先ごとに異なる商品情報運用ルールといった業界課題があります。流通サービスの維持やAI・ロボット化の推進にも最新かつ正確な商品データは不可欠であり、PRSは、経済産業省の「商品情報連携標準に関する検討会」および「商品情報連携会議」と連携し、商流・物流両面から効率化を図ることで業界全体の発展を目指します。

 具体的には、製配販に携わる業界全体のメーカー、卸売業、小売業の各企業に広く賛同、参加していただき、経済産業省の「商品情報プラットフォーム構想」で掲げる商品情報5原則に沿った商品情報の一元管理を行うことにより、業界全体の利便性向上と効率化に貢献します(下図参照)。

 また、経済産業省が主導する「産業横断レジストリー」と連携することで、業界を超えた商品情報をリアルタイムに入手できるようになります。例えば、ドラッグストアが食品情報を得るために別業界のデータベースにアクセスする必要がなくなるなど、サプライチェーン全体の商品情報がシームレスにつながります。

 「商品情報の社会インフラ」としての役割を担い、PRSは流通の未来をアップデートしていきます。

■会社概要

会社名 / 株式会社プロダクト・レジストリ・サービス
所在地 / 〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-1-6 日比谷パークフロント19F
代表取締役社長 / 松本 俊男
設立日 / 2025年11月12日
資本金 / 1億円
事業内容 / 商品情報管理・提供、関連コンサルティング、インフラ構築 他
HP / https://proregi.co.jp/