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自分の実力や魅力が相手に正確に伝わるように、自分の「印象」を「管理=マネジメント」する「印象管理」。
「印象管理」を行うことでポジティブに自分らしさを表現することは、ビジネスの場でベストパフォーマンスを発揮することにもつながる。
国際イメージコンサルタントとして活躍する吉村ひかる氏をお招きし、当社社長・坂田政一と「印象管理」の大切さを語り合っていただいた。

「印象」をコントロールし  自分自身を相手に誤解なく伝える

坂田
 吉村先生の『世界のエリートが学んでいる印象管理の教科書』を拝読し、非常に感銘を受けました。印象管理とはどういうものなのか、簡単にご説明いただけますか。
吉村
 以前は「インプレッション・マネジメント」と英語の表記をそのまま使っていましたが、日本ではあまり響かなかったため、「印象管理」と日本語で言うようになりました。その言葉通り、「自分の印象をマネジメントする」という意味で使っています。
 相談に来られる方のお話を伺っていると、「他人からどう見られているのかわからない」「どう思われているのか気になる」など、ネガティブな思考で自分を捉えていることが多い。それを「自分をどう見せるか」「どう伝えたいか」というポジティブな思考に変えることで、生きる楽しみを見出したり、ビジネスで成果を上げたりすることを目指すマネジメントです。
坂田
 私は先生の著書を拝読するまで、印象管理とはファッションや髪型、表情など、いわゆる見た目で他人に好感を持ってもらうためのテクニックと捉えていました。外見も大切な要素だと思いますが、もっと中身の部分、つまり人間力をいかに高めるかということだとわかり、共感しました。外側だけを磨いてもだめだということですよね。
吉村
 外側とおっしゃいましたが、人間は中身を積み重ねていくと、一番表に現れるのが外側です。つまり外側が独立して存在しているわけではなく、中身を積み重ねた一番端が外側であり、それも含めて自分自身と捉えた方がしっくりくると思います。
 最初はとっつきにくいと感じた人が、二度三度とお会いしているうちに非常にチャーミングな人だったと認識を改めることがあります。よい意味で裏切られたとしても、初対面でネガティブな印象を与えているとしたら、すごく損をしています。マネジメントとい うと難しく聞こえますが、むしろ自分自身を相手に誤解なく伝えることが印象管理だと考えています。
坂田
 確かに最初にお会いしたときの印象と違うということはよくあります。最初からストレートにその人自身を表現してくれていたら、打ち解けるのがもっと早かったのにと残念に思うこともあります。ビジネスの場では最初から好感を持ってもらえるよう、自分自身の印象をコントロールすることが大切ということですね。

外見を整えることでベストパフォーマンスを発揮する

自分の印象をマネジメントしてポジティブな思考で自分らしさを表現します

吉村氏
吉村 ひかる : 株式会社BEST GRADE 代表取締役、AICI国際イメージコンサルタント協会認定 国際イメージコンサルタント。東京女子大学と文化服装学院を卒業後、株式会社三越(現・三越伊勢丹ホールディングス)に入社。2010年、国際イメージコンサルタントの資格を米国で取得し、独立。これまでに10万人以上のコンサルティングを手がける。著書に『世界のエリートが学んでいる印象管理の教科書』(自由国民社)等。
 
吉村
 自分が相手にどんな印象を与えているのかを意識するだけでも、大きく変わると思います。私は新入社員の研修や管理職向けのセミナーなどで、「自分の外見は自分のもののようでいて、自分のものではないんですよ」というお話をしています。私は今、こうして坂田社長と対談していますが、自分がどんな表情で話し、どんなふうに映っているか、自分自身ではわかりません。それが見えているのは、お話ししている相手の方です。おそらく笑顔で話していれば、相手も気を許してくれると思いますが、腕を組んで笑顔一つ見せずに話していると、きっと不安に思うことでしょう。
坂田
 おっしゃる通りです。今日は先生と対談するということで、自分なりにふさわしいと思うシャツやネクタイを選んできたつもりですが、鏡をちゃんと見たのはそのときだけです。私がどう見えているのか、先生の反応を通して推測するしかありません。外見は自分だけのものではないと意識するだけでもだいぶ違ってきますね。
吉村
 一番残念なのが「今日は時間がないから」と、何も考えずに目の前にあった服を着ていくことです。その日に会議や商談があったとしたら、「あの服を着てくればよかった」と考えるだけで、ベストパフォーマンスを発揮できなくなるかもしれません。すごくもったいないと感じます。服装だけに限りませんが、外見を整えることで自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるようになり、その日一日が全然違ったものになると思います。
坂田
 会議や商談などの場では、自分の装いとその場の雰囲気がマッチしていると心地よく感じます。自分がプレゼンターだったらよく喋れますし、そうでなかったとしても気持ちよく一日を過ごせます。逆にネクタイにしろ、チーフにしろ、「これじゃなかったかな」と思うと、自分の気持ちを持ち直すのに時間がかかったりします。そういうときはおそらくパフォーマンスを十分に発揮できていないんでしょうね。

所作の大切さ 相手視点に立つ

坂田
 先生は外見だけでなく、所作も大切だとおっしゃっています。 英語の「behavior」、いわゆる立ち居振る舞いのことだと思いますが、私もお客様とお話ししたり、チームの中で会話を交わしたりするときに所作の大切さを実感しています。
吉村
 好感度の高い外見に所作が加わることで、相手に伝えたいことがより伝わるようになります。誰かのプレゼンテーションを聞いていても、まったく動かずに話している人より、身振り手振りを使って話している人の方が、話の内容が入ってきやすいですよね。
坂田
 私もプレゼンテーションで気持ちが乗ってくると、自然に手が動くことが多くなります。逆に乗っていないときは、あまり動いていない気がします。一対一で話しているときも、気持ちが乗ると相手にグッと近づいたりしているようです。相手によい印象を与える所作というのは、どうしたら身につくのでしょうか。
吉村
 その方の癖もあるので一概には言えませんが、視点を自分視点ではなく、相手視点に変えてみるのが有効だと思います。例えば、頼んだ資料がなかなか上がってこない部下に対して、自分視点で考えると「どうして早くできないんだ」といらだちが募りますが、相手視点に立つと「これだけ時間がかかっているのは何か問題があるのでは?」と考えるようになります。そうすると、部下と話す際も腕組みはしないだろうし、話し方も違ったものになると思います。

外から見ている もう一人の自分を想像する

坂田
 先生の著書の中に「アンガーコントロール」の話が出てきます。アンガー、つまり怒りの感情が込み上げてきたら、心の中で10を数えるという方法が紹介されていました。実は私もイライラしたり、怒りの感情が湧いてきたりすると、ゆっくり6まで数えるようにしています。数え終えたときには少し冷静な気持ちになっていて、たとえ笑顔になれなくても、声を荒らげるなどのストレートな感情を表に出すことはなくなりました。
吉村
 怒りにも種類があるんですよ。怒って当然のアンガーもあれば、無駄なアンガーもあります。一時的な感情で怒るのは無駄なアンガーで、百害あって一利なしですが、ここは絶対怒った方がいいというときに怒るのは悪いことではありません。それを自分の中で見分けることが大切です。
 一つの方法として、自分を外から見ているもう一人の自分を想像するというのがあります。ロックミュージシャンの矢沢永吉さんの名言「俺はいいんだけど、YAZAWAがなんて言うかな」みたいな感じです。
坂田
 それは面白いアイデアですね。実践してみる価値がありそうです。

「伝えた」と「伝わった」は違う 相手が言い切れる雰囲気づくり

印象管理によく学び伝わるコミュニケーションを続けます

坂田
坂田
 先生は外見、所作に続いて、コミュニケーションの大切さも挙げています。
吉村
 外見や所作の印象管理は、やろうと思えば自分一人でできますが、コミュニケーションは相手がいて初めて成り立つので、「伝える」という意味では重要なファクターです。「伝えた」と「伝わった」は違います。相手に「伝わった」かどうかを常に確認しながらコミュニケーションを取るようにすることで、誤解やすれ違いを避けることができ、よいスパイラルで仕事や人間関係が回っていくと思います。
坂田
 コミュニケーションは本当に難しいですね。こちらが一生懸命伝えても、伝わっていないことがたくさんありますし、間違って伝わることもあります。相手の話も自分では理解したつもりでいても、相手は全然違うことを言いたかったという場合もある。
 先日、コミュニケーションを専門に研究する方とお話しする機会があったのですが、その方が「コミュニケーションをいくら続けても相手のことはわかりません。だけどそれでいいんです。コミュニケーションは伝えるためにあるのではなくて、コミュニケーションすること自体がコミュニケーションですから」とおっしゃっていました。そういう考え方もあるのかと、新鮮に感じました。
吉村
 コミュニケーションし続けることは大事です。ちゃんと伝わらなかったりすると、もう言うのをやめようと思う人もいるかもしれませんが、私も伝え続けること自体がコミュニケーションになると思っています。
坂田
 より相手に伝わる手法やテクニックのようなものはあるのでしょうか。
吉村
 正解はないと思いますが、相手の方が言い足りない状態で終わってしまうことが一番もったいないですね。「あれが一番言いたかったのに」となると、後々ずっと心残りになると思いますので、少なくとも相手が言いたいことをすべて言い切れるような雰囲気をつくることが大切です。
坂田
 私もそう思います。実践はなかなか難しいですが、聞き上手になって、相手の話に真摯に耳を傾けることがコミュニケーションをスムーズにする秘訣といえそうですね。

「話しかけられる存在」になる ポジションに合わせて「演じる」

坂田
 新年度が始まり、新入社員が入ってきたり、新たな気持ちで仕事に取り組もうという人も多いと思います。そうした方々に向けて、印象管理という面ではどのようなことを心がけるとよいのか、アドバイスをいただけますか。
吉村
 まずは話しかけられる存在になることを意識するとよいと思います。「あの人と話してみたい」「あの人に聞いてみよう」と思われないと、コミュニケーションが始まりません。相手に好感を持ってもらえるような身だしなみや礼儀正しさを身につけることで、話しかけられやすい魅力ある人になると思います。
坂田
 最近の若い人は自分を表現するのが上手な人が多いように思いますので、あまり周囲を気にせず、本当の自分自身を出してみるとよいかもしれません。外見に限らず、会社や組織の中で目にとまると声をかけられる機会も増え、結構打ち解けやすくなるのではな いでしょうか。
 「おはようございます」といった挨拶でもいいので、自分から声をかけるようにすることも大切です。それがきっかけになり、うまくコミュニケーションが取れるようになると思います。
吉村
 マネジメントの立場にいる人は、どんと構えていてほしいですね。もちろん聞く耳は大切ですけれども、周りの声に左右されるのではなく、自信を持って進む方向を示していれば、たとえそれが間違っていたとしても、一緒に働く従業員の方たちは安心感を覚え、信頼してついていこうとするでしょう。
坂田
 おっしゃる通りです。やはり上に立つ者に自信がないと、部下も自信を持って仕事ができません。トップは内心、自分の判断が正しかったのかなど、日々いろいろ悩んでいると思いますが、「自分はこう思う」という基本の部分は変えないことが大切です。ただ、世の中は動いていますから、基本を持った上で、動きを見てどう自分のスタンスを変えていくか、それをどう周囲に伝えていくかが問われます。
 その意味でも印象をマネジメントすることが必要ですし、組織やチームにおける自らのステージやポジションを把握した上で、外見を含めて自分がどう「演じる」かが大事だと考えます。
吉村
 「演じる」というのはまさに印象管理と同じことです。坂田社長は意識せずとも、印象管理を続けてこられたのだと思います。
坂田
 印象管理については、まだまだ教わりたいことがたくさんあり、しっかり学んでいきたいと思います。
 本日はありがとうございました。