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原田曜平氏と読み解くZ世代、ゆとり世代のホンネ

意識調査を通して消費財や暮らしにまつわるトピックスをお届けする『Fromプラネット』が200回を迎えました。記念特別企画として、流行・消費のカギをにぎる20代にスポットを当て、男女2,000人にライフスタイルと身だしなみについての調査を実施。若者の文化や消費行動に造詣の深いマーケティングアナリスト、原田曜平氏とともに、調査結果を読み解きます。

原田曜平氏(はらだ ようへい)
マーケティングアナリスト。広告業界で各種マーケティング業務を経験した後、2022年4月に芝浦工業大学教授に就任。専門は日本や世界の若者の消費・メディア行動研究及びマーケティング全般(調査、インサイト開発、商品・パッケージ開発、広告制作等)。近著に『Z世代に学ぶ超バズテク図鑑』(PHP研究所)、『シン世代マーケティング』(ぱる出版)。

環境・SDGsへの関心はそれほど高くない 男女の意識差は縮小

 若者はいつの時代でもトレンドの発信源となり、マーケットにおいて重要な役割を果たしてきました。少子化が進む現在でもそれは変わらず、将来的に消費の中心となることを考えても、この世代へのアプローチは欠かせません。
 調査は日用品・化粧品に関する事柄を中心にライフスタイル・身だしなみについて聞き、インターネットで20代の男女各1000人から回答を得ました。原田氏による世代区分では1987~1995年生まれが「ゆとり世代」、1995~2010年生まれが「Z世代」であり、20代にはこの二つの世代が含まれていることになります。
 調査項目のなかでも原田氏が注目したのが、「あなたは物やサービスを購入するとき、環境に配慮しているものかどうかを考えますか」という問いへの回答でした(図表1)。若い世代は環境やSDGsへの関心が高いと言われていますが、「考えることが多い」が26.1%、「考えることは少ない」が40.0%という結果でした。原田氏は次のように解説します。
 「グレタ・トゥーンベリさん※などのイメージから若い人は環境意識が高いと思われがちですが、私がこれまでに行った調査でもそのような結果は出ていません。
 一方で注目すべきは、男女でほとんど意識の差がないことです。女性のほうが環境意識が高いイメージがあるかもしれませんが、むしろ男性のほうが『考えることが多い』の割合が若干高くなっています。『男性が女性におごる』という意識が薄いなど、さまざまな点で男女差が縮まっているのがこの世代の特徴の一つです」

 イメージや思い込みにとらわれず、データに基づいて若者像をとらえることが重要と言えそうです。

※グレタ・トゥーンベリ:スウェーデンの環境活動家。2003年生まれ


キャッシュレスの普及はお店次第 SNS上では女性が主役

 「財布の中にある現金の金額」を聞いた質問では、回答が最も多かったのは「5千円〜1万円くらい」(18.1%)でした。次いで「1万円〜2万円くらい」( 17.3%)、「3千円〜5千円くらい」(13.2%)、「現金は持たない」(9.6%)という結果となりました。若い世代は電子マネーなどのキャッシュレス決済を使いこなしているイメージがありますが、まだまだ現金重視派が多いようです。また、男女で明確な差は見られず、「5千円〜1万円くらい」は同率、「1万円〜2万円くらい」でも女性が0.5ポイント上回っただけでした。
 「日本ではまだ現金しか使えない店もあるため、完全にキャッシュレスに移行している人は若者でも少数です。ただ、1円単位で割り勘ができるPay Payの機能が重宝されるなど、キャッシュレス志向は高く、店側の環境が整ってくれば、海外のように現金をまったく使わない人が増えていくでしょう」(原田氏=以下同)
 「ふだん利用しているスマホの機能」を複数回答で尋ねたところ(図表2)、最多は「SNS(インスタグラム、ツイッター、フェイスブックなど)」(53.7%)、次いで「動画・映像コンテンツの視聴(YouTube、Amazonプライム・ビデオなど)」(47.7%)、「コミュニケーションアプリ・メッセージアプリ(LINE、Messengerなど)」(42.5%)でした。大半の項目で女性の利用率のほうが高く、特に「SNS」では女性63.4%、男性44.0%と19.4ポイントもの差がつきました。上位20項目のうち、利用率で男性が女性を上回ったのは、9位の「ゲーム」(男性35.8%、女性32.8%)だけでした。
 「SNS別に見ると、フェイスブックはゆとり世代、ティックトックはZ世代に利用層が分かれ、ツイッターはどちらにも使われています。そして20代全体で一番強いSNSはインスタグラムなので、企業の発信活動には重要です。ただし、インスタグラムは拡散力が弱く、バズりにくいという特徴があります。特に新興の企業はフォロワーを増やすのが難しいため、まずはティックトック、ツイッターなどのバズりやすいSNSやテレビで認知度・関心を高め、インスタグラムに誘導する戦略を取る必要があります。
 調査結果からも分かるように女性のほうがスマホを使いこなしていて、SNS上の情報も女性中心になっています。どちらかと言えば男性向けの商品の情報でも、女性に『いいね』を押してもらったり、女性の間でバズったりしないと男性に届きにくい構造になっています。
 ゲームも男性のほうが高いとはいえ、その差はわずか3ポイントで、『ウマ娘』のような一見男性向けのゲームでも女性のユーザーが結構いるようです」


コロナ禍で男性の美意識が向上 洗顔料も過半数が使用

 「リピート買いする日用品・化粧品のジャンル」を複数回答で聞いた質問では(図表3)、「シャンプー」(43.1%)、「歯磨き粉」(36.8%)、「ボディソープ・せっけん」(35.5%)の順となり、ほとんどの項目で女性が男性に10ポイント以上の差をつけました。ただ、おもに女性向けのジャンルでも、「スキンケア用品」は18.1%、「化粧品」は14.1%の男性がリピート買いをしています。
 「コロナ発生後に、若い男性の美意識が高まったことは間違いありません。Zoomなどで毎日自分の顔を見たり、運動をする機会が減ったりして肌荒れや目のクマが気になりだしたことが一因です。
 化粧品については、本格的にメイクをするというよりは、コンシーラーで肌荒れを隠したり、血色が良くなるようなリップをつけたりといった『メイクもどき』にとどまっているのが現状ですが、スキンケア用品を中心に今後も男性市場は拡大していくでしょう」

 さらに「使用しているスキンケアアイテム」を複数回答で聞いたところ(図表4)、「洗顔料」(62.8%)、「化粧水・ローション(フェイスケア)」(47.6%)、「乳液・保湿クリーム(フェイスケア)」(37.4%)の順となりました。男性だけで見ると「洗顔料」は51.4%、「化粧水・ローション(フェイスケア)」は28.6%が使っている一方、「スキンケアアイテムは使用しない」という男性も30.2%います。
 「スキンケアをせず、SNSも使わないというクラシカルな男性は一定数残るので、男女の差がゼロになることはないでしょう。美意識が高まっている男性とクラシカルな男性との格差が生まれている状況ですが、平均的には美意識が上がっています。
 最近では各メーカーが男性向けの化粧品アイテムを増やしています。私が注目している商品は、環境に配慮したパッケージや原料を使うなど、SDGsを切り口にした商品です。冒頭の調査結果でも分かるように環境意識は必ずしも高くないのですが、従来の商品よりも先進的なイメージを感じて手に取る男性も多いようです」


安さ重視でメルカリやECを活用 ネット上では誤情報の拡散も

 「日用品・化粧品の購入時の選択基準」を複数回答で聞いた質問では(図表5)、「値段」(61.3%)が大差をつけて1位。「性能」(45.2%)、「評判、口コミ」(25.0%)が続く結果となりました。
 「日本は物価が上がる一方で給与水準は変わっておらず、値段の安さを求める傾向はより高まっています。背伸びをしてDCブランドを買いたがったバブル期の大学生のような若者は少数で、全体的にはコスト意識が強いです。
 平成不況に直面したゆとり世代は節約志向が強く、Z世代はメルカリやBUYMAなどを活用して安いものを探すことに長けています。以前なら競争は国内だけでしたが、今はネットを通じて中国や韓国からも安くていいものが買える時代になっており、彼らに『アジアの製品は日本より劣る』という感覚はありません。特にZ世代の女性などは、日本より韓国のほうが進んでいるという認識もあるのではないでしょうか」

 価格志向の若者の間では、百円均一ショップなどの安価な化粧品も支持されています。さらには、既製品を混ぜ合わせるなどして自ら化粧品をつくる「コスメDIY」を試す人もいます。しかし原田氏は、コスメDIYに関して出回っている情報には誤ったものも多いと警鐘を鳴らします。
 「インフルエンサーがコスメのDIYやアレンジメントの方法を発信して女性の間で流行しています。しかし、誤情報が多いのが実状で、例えば『あるファンデーションを水に入れてかき混ぜると油分が取れてもっと肌に優しくなる』といった情報が出回っていますが、根拠はありません。美意識が高まっているにもかかわらず、安さ志向やSNSの弊害ゆえに間違った情報に結びついてしまっている面があります。科学的根拠に基づいた正確な情報を、彼女たちに見られるようなエンタメ性をもってメーカーが発信していくことが大切だと思います」


ファッションや髪は「プチ個性」重視 20代に絞った切り口が必要

 最後に、カラーリングについて聞きました。「髪の⽑をカラーリングしていますか。している理由を教えてください。(お答えはいくつでも)」の問いに対し、「していない」と答えた男性は65.9%、女性は46.1%でした。男性の約3分の1と女性の半数強がカラーリングをしている計算になります。理由は「なんとなく」(12.9%)、「その色が似合うから」(10.4%)、「個性を出したいから」(9.7%)が上位に並びました。
 「これもSNS社会の弊害だと思いますが、一部のインフルエンサーを除いた大半の若者には『悪目立ちしたくない』という意識があり、とがったファッションや髪形を避ける傾向にあります。渋谷に集まる若者を見ても、20年ぐらい前は金髪が多かったですが、今はほとんど黒髪です。
 一方で、すごく目立つわけではないけれども何となくセンスがいいと思われるような『プチ個性』を大事にしています。髪を染めるにしても少しだけ染めたり、隠すことのできるインナーカラーだったり。服であれば、一見同じように見えてもステッチに特徴があるとか、細かいポイントで個性を出そうとしています。
 メーカーとすれば、『プチ個性』という切り口はボリュームゾーンである上の世代に響きにくいので、そうした打ち出し方は抵抗があるかもしれません。しかし、全世代向けのマーケティングが有効だった時代は終わりました。若い世代の感覚が変わってきている今、20代の市場を取りに行くには、そこに焦点を絞った商品開発や訴求を行う必要があります」


詳しくは、Vol.200 20代のライフスタイルと身だしなみに関する意識調査をご覧ください

調査機関:株式会社プラネットによる調査企画をもとに、
株式会社ネオマーケティングにて
「20代のライフスタイルと身だしなみ」に関する意識調査を実施。
インターネットで20代男女2,000人が回答
調査期間:2023年1月13日~ 18日
バックナンバーより時節に合ったトピックをご紹介しています。

10年後·20年後を見すえ、消費者としての20代を育てていく

 20代はほかの年代に比べれば人口が少なく、お金も持っていないので、リサーチや販促に力が入っていない企業が多いかもしれません。
 しかし、世界的に見れば日本は10番目ぐらいに人口が多い国で、今の20代でも一学年120万人ほどですから、それなりのボリュームがあります。また、10年・20年すれば彼らが一番お金を持っている層になります。若者のビール離れ、車離れと言われていますが、40代になって急にビールを飲むようになったり、免許を取ったりする人は少数でしょう。日用品・化粧品も同じで、年をとれば自然とお金を使ってくれるようになるわけではありません。企業には消費者を育てていく責任もあり、積極的に若い世代にアプローチする必要があります。そのためにも、環境やSDGsといったイメージ先行の切り口に安易に飛びつくのではなく、しっかり調査をして、彼らが買いたいと思えるような切り口を探ってほしいです。
 今回の調査で明らかになったように、価格設定も重要です。安さが重視され、どんなにいいものでも値段が高ければ買わないという人が増えています。昔の若者は年齢とともにどんどん高いブランドにステップアップしていきましたが、今の若者は30代、40代になっても、それほど金銭感覚が変わらない可能性があります。企業側が階段を用意して収入に見合ったものを提示していかないと、ハイブランドは将来的に苦戦するでしょう。彼らのコスト感覚をつかむためにもリサーチが必要です。

中高年へのアプローチにも20代の力が必要

 20代を取り込むことは、上の世代にアプローチする上でもポイントになります。  SNSは若者の独壇場になっており、特にティックトックは圧倒的にZ世代の利用率が高く、彼らが発信・拡散する情報が多くを占めています。新型コロナ発生後は中高年でもインスタグラムやユーチューブ、ティックトックを使い始める人が増えていますが、その際に遭遇するのは若者発の情報です。ですから企業活動においても、若者に拡散の手伝いをしてもらわないと、中高年にも情報を届けられない状況になっています。

 また、今の20代、特にZ世代は親との仲がとてもいいので、子ども経由で親に情報が伝わり、「じゃあ私も買ってみよう」という流れになることも大いに起こりえます。あるいは親と一緒に買物に行って欲しいものを買ってもらったり、親子でおそろいの商品を買ったりすることも多いでしょう。
 消費者としても、またボリュームゾーンである中高年の消費のカギをにぎる世代としても、20代に対するマーケティングはもっと重視すべきだと思います。

当社の20代が選んだ

気になるトピック当社の20代従業員2名が、『Fromプラネット』のバックナ ンバーから注目したトピックをご紹介します。

私が気になったトピックはこれ!

テレビ視聴(Vol.149)

企画開発部出口 瑠菜

テレビの所有率の高さに驚き

 私の家にはテレビがありません。代わりにスマホで動画配信サービスをよく利用します。「好きな場所」で「好きな時間」に「好きな動画」を観ることができるので快適です。そのため、自宅に「テレビがある」人はどれくらいいるのかが気になり、このトピックを選びました。調査結果から「テレビがある」人が多くて驚きました(「複数台ある」と「1台ある」の合計が95.4%:n=4,000人)。たしかに実家にいた頃は、朝テレビがついていて、決まった時間にニュースや天気予報が流れているのを、登校準備をしながら見ていた記憶があります。そういった規則的な行動をしている人にとっては便利なものなのかなと感じました。

私が気になったトピックはこれ!

ふるさと納税(Vol.169)

ネットワーク管理部小池 旺

「手続きが面倒」を解消する制度に注目

 私は2019年からふるさと納税を始めました。返礼品は「ほたて」「いくら」「甘えび」などの魚介類が多く、またお弁当を作るので「梅干し」はマストアイテムです。
 寄付金控除の申請は今まで確定申告で行っていましたが、1年間で5自治体以内への寄付であれば「ワンストップ特例制度」の利用が可能、さらに2022年分の寄付からオンラインで申請可能な自治体はスマホで手続きが完結できるアプリが出てきました。これにより本調査にある20代「手続きが面倒」(男性46.8%:n=77人、女性41.8%:n=67人)が解消されると思います。また、被災地を寄付で応援することも可能ですので、これからも有意義に利用したいです。

生活者の今を知る 意識調査『Fromプラネット』

株式会社プラネット 広報部 河合 英明

 消費財や暮らしにまつわるトピックスをお届けする『Fromプラネット』は毎月2回、様々なテーマを調査し発信しています。
 調査は、全国20~70代以上の男女各2000人、計4000人にインターネット調査で行っています(今回の「20代のライフスタイルと身だしなみ」調査は、全国20代の男女各1000人、計2000人に調査を実施しました)。
 調査結果はユーザー様からお問い合わせをいただくのはもちろん、Webニュース、テレビ、新聞など幅広い媒体でも紹介されています。レポートに記載できなかった調査結果や属性データなどもご提供できますのでお気軽にお問い合わせください。 お問い合わせ先:株式会社プラネット 広報部 
Mail:koho-pr@planet-van.co.jp