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サラヤ株式会社
コミュニケーション本部
広報宣伝統括部 統括部長

廣岡 竜也 様

プラネットのサービスをお使いいただいているユーザーに、企業戦略やサービスご利用状況をお聞きする「CLOSE UP USER」。
今回は、SDGsの先進企業として知られるサラヤ株式会社の廣岡竜也様(コミュニケーション本部広報宣伝統括部 統括部長)に、同社が創業時から取り組んできた社会貢献活動について語っていただきました。

70年前からSDGsを先取り 独自の製品で衛生・環境を改善

 当社が創業した1952年、日本では赤痢が流行し、戦後の貧困の中で薬を買えるのはわずかな人だけで、多くの人が亡くなっていました。誰もが等しく赤痢から逃れられる手段がないかと考えた創業者が開発したのが、手洗いと同時に殺菌・消毒ができる日本初の薬用石けん液です。標語を使って感染対策の基本である手洗いの習慣を広めながら、製品を普及させていきました。社会問題の解決とビジネスを結び付けるのは、まさに現在のSDGsの考え方と同じです。
 1971年に食器用洗剤「ヤシノミ洗剤」を発売した背景にも社会問題があります。当時主流だった石油系合成洗剤による環境汚染が問題化したことから、環境負荷が小さく手肌にもやさしい植物性洗剤を、ヤシの油を使って開発したのです。さらに、1982年にはプラスチックごみを削減するため、台所洗剤としては日本初となる詰め替えパックを採用しました。まだ環境保護への意識が弱かった高度成長期の日本ではなかなか売れませんでしたが、「いつか認められる時が来る」と販売を続け、看板商品に成長していきました。

批判を機に環境保全団体を設立 売上の1%をボルネオでの活動へ

 しかし2004年、ボルネオ島でのヤシ農園の拡大が、熱帯雨林の伐採と動植物の絶滅危機を引き起こし、ヤシノミ洗剤が原因だと指摘されたのです。実際には、アブラヤシという植物から採れるパーム油が原因であり、その用途の85%は食品で、インクや化粧品、洗剤や石けんなども含む非食品用途は15%。その中で大きな企業ではない当社が使っているのはごくわずかでしたが、メディアでの報道により当社が矢面に立たされました。
 ただ、それまではお客様にばかり目が向き、原料調達への視点が弱かったのも事実です。これを機に現地の環境保全に取り組み、野生生物局などと協力して「ボルネオ保全トラスト」を立ち上げ、ヤシノミ洗剤の売上の1%を同団体に拠出することを決定しました。これには当初、社内で反対意見もありましたが、日本では先進的な取り組みとして注目を集めたことで売上も上がりました。この成功が、後の社会貢献活動にもつながっていきます。

ウガンダの衛生向上に注力 消毒剤の現地生産は黒字化も達成

 2012年の創業60周年を記念した事業として、2010年からウガンダで、ユニセフとの連携による「100万人の手洗いプロジェクト」を開始しました。創業時の日本と同じように、手洗い習慣が根付いていないために失われていく命が、アフリカにはまだたくさんあります。手洗い設備の建設や啓発活動を行い、家庭での石けんを用いた手洗い普及率は、2006/07年の14%から2019/20年には38%に改善しました。
 活動地域としてウガンダを選んだのは、政情が安定していること、ビクトリア湖の水が利用できること、英語が使えること、ウガンダ政府も衛生向上を目指していたことが理由です。特に英語が通じることは、慈善活動にとどまらずビジネスにつなげるためにも必要でした。
 また、病院を視察した際、消毒剤が不足して十分な感染対策ができていないことが判明したため、2012年から「病院で手の消毒100%プロジェクト」も開始しました。外国企業が販売する消毒剤が高くて買えないことが原因だったので、現地に製造拠点をつくって原料を調達。さらに雇用創出にもつなげながら安価な消毒剤を提供しました。この事業はコロナ前に黒字化しています。

生活習慣病、フードロスに取り組み 生産地の発展にも寄与

 「衛生・環境・健康」が当社の三つの柱ですが、「健康」に関わる活動としては、1995年に発売した日本初のカロリーゼロ甘味料「ラカント」の開発があります。
 1980年代、日本では生活習慣病、とくに糖尿病の人が増えていました。糖尿病になると糖分摂取が制限され、食事の満足度が下がります。砂糖の代わりになるものがあればそれを改善でき、予防にも役立てられると考え、代替甘味料の開発に着手しました。安全性にも配慮し、天然素材でカロリーゼロ、おいしい甘味料を目指してたどり着いたのが、中国で古くから漢方に使われていた羅漢果です。この羅漢果から抽出した甘味成分を使ってラカントが生まれました。羅漢果の産地である中国内陸部の桂林市は当時とても貧しかったのですが、栽培法や甘味成分抽出などのノウハウを確立して現地に還元し、産業化に貢献しました。このように産地と食卓双方の問題解決につながる取り組みを当社では「From Farm to Table」と呼んでいます。
 食品関連では、急速冷凍装置の活用を通じたフードロスの削減にも取り組んでいます。旬の農産物を冷凍して通年流通できれば、余っても捨てることはなくなり、価値を高めることにもつながります。アフリカでは、ケニア沿岸で魚を衛生的に処理して冷凍し、内陸国であるウガンダの和食レストランで刺身を提供するというテスト事業も行っています。食材だけでなく調理品の冷凍もできるので、飲食店の業務効率化にも活用できます。

売上と連動した活動は「持続可能」 地域への長期的な関与を続ける

 このように、当社は創業時から社会問題の解決とビジネスを結び付けて考えてきました。
 寄付行為であれば、会社の業績が悪化すればストップしてしまいます。しかし売上と連動させれば、消費者の理解を得て商品が売れている限り持続可能な事業になります。
 一つの地域で長く活動をしていると、また新たな問題が見えてきます。アフリカでは風土病の治療薬の開発と普及、子宮頸がんの検査促進も始めました。限られたリソースをいろんな地域に分散させると活動のスピードが落ちてしまいますので、今後もアフリカやボルネオなどに活動地域を絞り、関与を続けていきたいと考えています。

SDGsに先駆けた革新的な商品とプロジェクト

人にも環境にもやさしい「ヤシノミ®」シリーズ
手肌へのやさしさと高い生分解性をもつヤシの実由来の洗浄成分を使用した“ 無香料・無着色"の洗剤。現在ではパーム油関連商品の売上※の1%がボルネオの環境保全に使われる。※メーカー出荷額

ウガンダでの「病院で手の消毒100%プロジェクト」
2012年から「病院で手の消毒100%プロジェクト」を開始し、ウガンダの病院からの厚い信頼を得る。コロナ禍では急激な需要に追いつくべく、現地の製造拠点が24時間体制でアルコール手指消毒剤の生産を行った。

カロリーゼロ・糖類ゼロの自然派甘味料「ラカントS」
中国の桂林に自生するウリ科の果実「羅漢果」の高純度エキスと、トウモロコシの発酵から得られる甘味成分エリスリトールからできた自然派甘味料。様々な低カロリー、低糖質食品やスイーツに広がりを見せている。

企業名
サラヤ株式会社
創 業
1952年(昭和27年)
設 立
1959年(昭和34年)
本社所在地
大阪市東住吉区湯里2-2-8
TEL
06-6797-3111
代表者
代表取締役社長 更家 悠介
事業内容
事業内容 家庭用及び業務用洗浄剤・消毒剤・うがい薬等の衛生用品と薬液供給機器等の開発・製造・販売、
食品衛生・環境衛生のコンサルティング、食品等の開発・製造・販売
ホームページ
https://www.saraya.com/