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牛窪 恵
トレンド評論家、立教大学大学院(MBA)客員教授

1968年東京生まれ。立教大学大学院・博士課程前期修了。大手出版社で勤務したのち、独立。2001年マーケティングを中心に行うインフィニティを設立、同代表取締役。マーケティングやトレンドに関する著書を多数出版するほか、NHK総合『所さん!大変ですよ』など、TVのコメンテーターとしても活躍。近著に『若者たちのニューノーマル〜Z世代、コロナ禍を生きる』(日経プレミアシリーズ)がある。

生まれながらの「デジタルネイティブ」であり、SNSを自在に使いこなし、物やサービスを購入する際も先々のことまで考え、SDGsへの関心が非常に高い。そんな特性を持つZ世代は、今後の日本経済をけん引する存在として期待されている。彼らの価値観、働き方、消費性向などを、トレンド評論家の牛窪恵氏が解説する。

節約が当たり前 親や祖父母が大好き

 Z世代は1995年から2004年に生まれ、現在18歳から27歳になる年齢層で、1971年から76年に生まれた団塊ジュニア世代の子どもぐらいに当たる。団塊ジュニアが社会に出た頃は就職氷河期で、なかなか希望する会社に入れず、その後、労働者派遣法改正により派遣社員も増えた。この辺りからいわゆる終身雇用が崩れてくる(図表1)。
 したがって、その下のロスジェネ世代(1977〜81年生まれ)以降は、ずっと同じ会社で働くとは考えず、転職が前提の人も増えた。世代を経るにしたがい、世の中いつ何が起こるか分からないという感覚が強くなっていく。
 Z世代の多くは2011年の東日本大震災も鮮烈な記憶として体感しており、世の中を不確実で先の見えないものと捉えている。また、団塊ジュニアの頃から長い不況期に入るため、節約志向がより進化していった(図表2)。
 もう一つ大きな影響を与えているのが「デジタル化」である。1998年にWindows98が発売され、ゆとり世代以降はインターネットや携帯電話が身近にあるという環境の中で育ってきた。一人っ子の割合が徐々に増え始めたこともあり、Z世代は親だけでなく、祖父母とも仲がいい。「地元」「親元」が彼らのキーワードであり、就職後も親や祖父母の近くで暮らしたいと考える人が多い。身の回りの人たちを大切にし、外に出て冒険するより、地元で地域社会に貢献したいと考えやすいのがZ世代である。



草食系・ゆとり世代で培われた「身の丈」「コスパ」

 Z世代を草食系世代からの変化で見ていくと、草食系はロスジェネ世代から続く節約志向がさらに顕著になってくる。2004年に政府が発した「自己責任」という言葉を重く受け止め、当時のインタビューでも「これからは国も会社も守ってくれない」や「危険には近寄らず、自分で身を守らないと」などの言葉が多く飛び出した。
 草食系世代は、いま現在の時点で価格を比較し、「できるだけ安いモノを買う」との志向が強い(図表3)。
 ゆとり世代になると、今度は「コスパ(コストパフォーマンス)」、いわゆる費用対効果を重視し始める。現時点だけでなく、中長期的に見て何がお得で損しないかを強く意識するようになる。
 子どもの頃からインターネットが身近にあった世代で、無駄なことはしたくないという思いが強く、コスパを考えて割に合わないことはしない。ただそれが先々自分のためになると思えば、多少リスクがあることでもあえてトライすることもある。
 ゆとり世代の親はバブル世代が多く、部分的には消費好きで冒険好き。ゆとり世代はコスパ志向でありながら、親の世代の特徴を少なからず受け継いでいる。



Z世代は「タムパ」 ググらずSNSで「タグる」

 一方、Z世代になると、コスパという考え方が進化し、「超コスパ」あるいは「タムパ(タイムパフォーマンス)」と呼ぶ域にまで達する。つまり時間対効果にまで目を向け、仕事を含めたすべての物事をいかに効率よく行えるかを考える。消費においても、いかに自分が欲しいものに最短でアプローチできるかと工夫する。
 例えば、ネットで情報を探す際も、グーグルのような検索エンジンではなく、ハッシュタグを使いSNSで検索する。検索エンジンでは自分に関係ない情報も多く出てきてしまうが、ハッシュタグなら自分の趣味や興味があるものにダイレクトにアクセスできる。彼らにとってネットはもはや「ググる」ものではなく、SNSで「タグる」ものになっている。
 一時期「こけし」を愛する「こけ女」が話題になったように、どこに同好の士がいるか分からないニッチな趣味でも、ハッシュタグ一つでつながり、コミュニティが生まれるのもZ世代の特徴だ。

SDGs志向が強く 常にリスクヘッジを考えて行動

 Z世代はモノを購入する際、それが後々どうなるかなど、廃棄時のことまでを考える。環境や人権への配慮を教える学校教育の影響もあり、安くても、地球環境への負荷が大きかったり、海外で人種差別のようなことが行われて製造された商品は買わないなど、SDGs志向が非常に強い。SDGsへの配慮や社会貢献活動に取り組まない企業は、彼らに信用されない。
 また、失敗を前提にした価値観で常にリスクヘッジを考え、失敗した際に備えて〝プランB〟を用意しておく傾向もZ世代の特徴である。例えば、第一志望の会社に内定が決まった直後から、転職サイトをチェックする傾向だ。転職や副業は当たり前で、何歳ぐらいまでにどんな能力を身に付けておくと転職が有利になるかなどを、入社前から知っておきたいと考える若者が多い。
 大学などで、キャリアプランを当たり前のように教えられてきた世代でもあり、失敗やリスクを前提に「二刀流」で備える志向が強い。

二世代、三世代を見据えたマーケティング

 そうしたZ世代に向け、物やサービスを販売するには、どうアプローチすればよいのだろうか。前述したように、Z世代は親だけでなく祖父母とも仲がよく、同居していなくても近接居住というケースが多い。国立社会保障・人口問題研究所の調査(2018年)でも、夫か妻の実家から60分未満の距離に住む夫婦がこの10年間、7割を超え続けている。
 われわれの調査でも、休日は親や祖父母と一緒に買物するケースが多く、Z世代の「代理購買」を親や祖父母が高頻度で担っている。
 したがって、当事者であるZ世代だけでなく、実際にお金を出す親や祖父母の世代にも情報を流すことが重要になってくる。こうした二世代、三世代を同時に攻めるアプローチが、Z世代の市場において、効果的な策の一つである。

「シェア買い」「限定」などで衝動買いを促す

 今後も少子化は進み、経済格差も開いていくだろう。中間所得層より収入が低い層では、生活必需品は買うが、それ以外は買わなくなる可能性も高い。ただし、欲しい物はどうしたら効率的に買えるかを考えるのがZ世代だ。その方法の一つが、コストコなどでよく行われている「シェア買い」だ。一つのものをみんなで分け合えば、高価なものでも格安で手に入れやすい。既に「シェア買い」は友だち同士だけでなく、家族間でも行われている。家族旅行などがその一例で、祖父母がある程度出してくれるとなると、高額な商品にも手を伸ばせる。
 中間所得層が多かった時代は、「人より良いものを」など、周りとの比較で消費する人が多かった。しかし経済的に厳しい人たちが増え、消費も成熟し、他者との比較では売れにくくなった。そこで、グループ買いの提案や、「期間限定」「今だけ」などの希少価値、そして「思い出」につながるコト消費などが、衝動買いを促す有効な戦略となる。

「地元」のモノ、サービスに大きなチャンス

 Z世代はこれから結婚し、親になっていく世代だが、今後も「近居」の志向は変わらないだろう。 経済的な理由に加えて、不安な時代は人と人のつながりが重視される。新型コロナウイルスの感染拡大により、欧米でも親との同居や近居が増えた。日本でもこの傾向は続くだろう。
 そうなると「地元」志向も強くなる。地元に住み、人とのつながりを大切にするZ世代は、大量生産されたモノより、地元の友人や知り合いが提供するモノやサービスを好む。
 SDGsの面からも、環境負荷が少ない地産地消的な消費が増えるだろう。
 「近居」という意味では、親のつながりがそのままZ世代にも引き継がれるので、地元の店や企業にとっては大きなチャンスとなる。全国展開しているチェーン店も、イベントなどの開催で地域のコミュニティにアクセスすることが、今後ますます重要になるはずだ。