株式会社プラネット

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公益財団法人流通経済研究所が主催する「効果的情報連携に向けたEDIワーキンググループ(WG)」では、小売業・卸売業・メーカーが情報連携や業務効率化のための議論をしており、プラネットも参加しています。 今回の本コーナーでは、WG参加者5名が集まり、現在の流通業界が抱える課題とその解決策、予想される将来の業界の姿、今後のプラネットに期待することなどを語り合いました。

EDIから電子レシートまで 多彩なテーマに取り組むWG

・皆さんの事業内容とEDIやプラネットとの関わりをお聞かせください。
 イオンアイビスはイオングループの流通系の情報システム会社で、GMS(総合スーパー)やスーパーマーケットなど3000店以上のPOSデータを直轄しています。
小林
 サンスターは歯科関連の医薬品や建築用シーリング材なども扱うメーカーですが、プラネットとの関わりでは、皆さんもご存じのオーラルケア、スキンケアなどの一般消費財が中心です。
 プラネットには立ち上げ時の出資メーカーの一つとして参加しました。当時はVAN*1がはやり始めたころで、EDIという言葉もまだ一般的ではなく、卸店へ説明に行ったのを覚えています。
塚本
 フジモトHDには卸売業を主体とする事業と、「ピップエレキバン」などのメーカー事業があります。プラネットには基幹EDI、バイヤーズネット、商品データベースなどの多様なサービスでお世話になっています。
 私個人は、10年ほど前にピップフジモトとピップトウキョウが合併してピップ株式会社になった際に、商品マスタなどの統合のためにバイヤーズネットを利用したのが大きな関わりをもつようになったきっかけです。
田中
 カストプラスは1994年創業ですが、その前、私はコンピューターメーカーに勤めていました。流通業のシステムを扱う部署で日用雑貨系の卸売業を担当していたので、「卸とメーカーの間で、こんなことがオンラインでできます」という提案書をよく出していました。メーカーの方の仲介で、その内容をプラネットの立ち上げ準備の会合で説明する機会があり、その際に玉生弘昌・現会長に初めてお会いし、「私たちはそれを事業化しようとしているんです」と言われました。
*1 VAN=VALUE ADDED NETWORKは通信サービスの一つで、プロトコル変換やデータ処理などの付加価値を加えた通信網

購買情報・生活情報の活用で
一人ひとりに最適な商品を提案していく

小林 洋 氏(こばやし ひろし)

サンスター株式会社
営業本部 営業企画部
セールス&マーケティンググループ担当部長

・「効果的情報連携に向けたEDI WG」には業種を超えてさまざまな企業が参加していますが、そこにプラネットも参加していますね。
石金
 前身は日本GCI推進協議会(GCIジャパン)のWGです。もともとGCIジャパンには当社から何人か参加していましたが、インターネットEDIへ移行することになって技術的なお手伝いもするようになりました。私個人は2006年ごろから関わっています。
田中
 港さんや小林さんは2002年のWG発足当時からいらっしゃいますが、私は2005年ごろにコンサルタントとして参加するようになりました。
塚本
 私が入ったのが一番最近で、5年ほど前のことです。
・WGではどのような研究や活動をされてきたのでしょうか?
 最初に取り組んだのは、標準として提示されていた流通BMS*2をシンプルに使いやすくすることでした。それに一定の成果が出た後は、電子レシートや、POSデータの共有、リアルタイムEDI、災害時のEDI活用などを研究しています。
田中
 電子レシートはいま話題になっていますが、経済産業省が取り組んでいる標準化に対して、私たちが提言を出したりもしています。
小林
 たとえば電子レシートなどで消費者の購買情報がわかると、無駄なく物が売れるようになったり、一人ひとりに合った商品を提案できるようになったりします。せっかくいろいろな情報が集まる環境になってきているので、そうした付加価値をつけられるようにしていきたいと、WGでも議論しています。
*2 流通BMS=流通ビジネスメッセージ標準(BUSINESS MESSAGE STANDARDS)の略で、メーカー、卸売業、小売業が統一的に利用できるEDIの標準仕様

未来の課題を予測し 経済産業省や企業へ提言

一つの業種ではなく
流通業界全体の
メリットを考える

塚本 隆広 氏(つかもと たかひろ)

フジモトHD株式会社
情報システム室 企画・管理担当 課長

・WGの価値はどのようなところにあると、参加者の皆さんはお考えですか?
塚本
 卸売業だけでなく、いろいろな業種の人と会って流通全体の話を聞くことができるうえに、それぞれが感じている課題を持ち寄って、流通の未来を一緒に語り合える重要な場になっています。一つの業種だけが得をするのではなく、全体の流通コストが下がるような仕組みを考えながらアイデアを出し合っています。
田中
 単にいまできていることを共通化するだけではなく、イノベーションと標準化を同時に考えていることです。
 現在、「少し未来」「もう少し未来」「ずっと未来」の三つを議論しています。「少し未来」は標準化の取りまとめがメインですが、「もう少し未来」では電子レシートなど、まだ一般化してはいないけれども取り組む企業が現れ始めているような技術を考えます。新しい技術は放っておくと規格がバラバラになりますので、まとめていかなくてはなりません。そして「ずっと未来」のことも検討し、経済産業省などへ提言しています。
石金
 製配販それぞれのプレイヤーが本音で話し合えるような、人のつながりが最も重要ではないかと思います。GCIジャパンのころは皆さん若かったこともあり、お酒を飲みながら夜中まで話し合ったりもしていました。業績が厳しくなると個別最適に走りがちですが、苦しい時こそ連携の価値を見いだして協力する必要があります。
 未来のことは、5年先は当たり前で、10年、15年先を読む活動をしています。WGで語り合った未来は的中することが多く、現在の物流危機も予測していたので宅配業者に提言に行ったりしました。

決済スピードの迅速化は
日本全体の問題として解決策を提言したい

港 和行 氏(みなと かずゆき)

イオンアイビス株式会社
デジタルソリューション本部 副本部長
兼 EC・ネットスーパーシステム部 部長

消費者のニーズをとらえて 商品提案や在庫適正化に生かす

・港様は、小売業として直近ではどのようなことが課題だとお考えですか?
 いま運用されているシステムは1カ月単位になっていて、発注は毎日行っていても、決済は月ごとです。大手企業はそれでも何とかなりますが、小さな企業の場合は、資金の問題などを考えるともっと早い決済が必要だと思います。自分の会社でも改善しなくてはなりませんが、日本全体の問題として解決できるシステムを提言したいと考えています。
 全銀EDI*3でも決済スピードを意識したものが作られていますが、明細1件ごとに手数料がかかるのがネックです。
田中
 世界的には日単位で決算書まで出せるのが標準で、月締めを行っているのは中国、韓国など数カ国です。日本ではそれが課題だと認識されていません。まさにガラパゴスです。
*3 全銀EDI=全国銀行協会と全国銀行資金決済ネットワークによる、企業の資金決済事務の合理化を目的としたシステム。2018年12月に稼働
・小林様は、メーカーとしてどのような課題を感じられていますか?
小林
 商品を本当に使ってほしい人に使ってもらえていないことが多いという問題があります。自分に合った商品を選択するための情報が消費者に届いていないため、ミスマッチが起きているのです。
 いまのデジタル環境では、こうした課題を解決できる可能性があるのではないかと期待しています。一人ひとりの嗜好や生活情報がわかれば、最適な商品を提案できます。
・塚本様は、卸売業として特に重要な課題は何だとお考えですか?
塚本
 卸売業の役割の一つは在庫コントロールです。商品を余らせないようにするには、消費者の声をとらえて、ピンポイントで消費者がほしいものを届ける必要があります。そのためにはマーケティングに力を入れなくてはならないと、会社としても考えています。
 現在は食品ロスが社会問題になっていますが、日用品でも以前から返品の問題はあります。適切な在庫コントロールをすることで、機会ロスを防ぎつつ廃棄ロスも減らしていくのが重要なテーマです。
・多くの課題がある中で、プラネットとしてはどのように業界を支えていくのでしょうか?
石金
 人が集まるようなマッチングの場を提供する独自の活動をしており、そこに価値があると思っています。
 サプライチェーンの効率化支援という面では、少し足踏み状態にあり、EDIやマスタが次のステップに行けていないというもどかしさも感じています。
田中
 今の流通BMSもそうですが、標準化がある程度達成されると、それを守ろうとする動きが生まれてしまいます。現在のバージョン1.3から2.0、3.0へと進めていく機運になると良いと思います。
石金
 今の標準からさらに次の標準へ、混乱なく橋渡しをするのがプラネットのミッションですが、現状はなかなかできていないのが課題です。

技術革新に対応するため 今から準備が必要

物流の作業の生産性と精度を上げるEDIの構築をプラネットに期待

田中 伸治 氏(たなか しんじ)

カストプラス株式会社
代表取締役

・10年後、15年後はどのように変わっていくべきでしょうか?
田中
 先ほど話が出た全銀EDIは、1件ごとの手数料が安くなって、リアルタイムで高速大量に処理ができるようになれば、それを皮切りに受発注を含めたすべてのEDIが変わることは可能だと思います。
 全銀EDIは決済業務の効率が大きく改善できるので、重要な技術だと思います。手数料1明細ごとにかかるのではなく、サブスクリプションのような方式になればいいかもしれません。
・メーカーや卸売業の業務はどう変わるでしょうか?
小林
 電子タグ、スマートハウス、自動運転車などは、そう遠くない未来に実用化されると思います。そうなると多様な生活情報が集められる環境になりますので、その情報を使っていかに付加価値を上げるかという準備を今のうちにしておかなくてはなりません。
塚本
 IT技術がさらに進化すれば、働く環境も、生活スタイルも、考え方もすべて変わっていくでしょう。流通全体も、柔軟にその変化に対応することを常に考えなくてはなりません。
 また、最近はSDGs*4が注目されていますが、社会的課題にも責任を持つ必要があり、CO2を排出しない企業や、プラスチックを使わない企業の社会的価値が上がるのではないかと思います。
*4 SDGs=国連で採択された「持続可能な開発目標」。貧困解消や気候変動対策など、2030年までに達成すべき17の目標からなる

製配販が集まる
マッチングの機会を
今後も提供していきたい

石金 克也 (いしかね かつや)

株式会社プラネット
ネットワーク推進本部 企画開発部長

商品マスタ充実や物流効率化に プラネットの貢献を期待

・最後に、プラネットに期待することをお一人ずつお聞かせください。
 メーカーはそれぞれの小売業に対して別々に商品の情報や写真を送り、各小売業も自社の商品マスタを構築しており、たいへん手間がかかっています。商品データベースはいろいろなところが作っていますが、その元締めになるようなものをプラネットに作成していただき、そこにアクセスすれば情報が取得できるようになればありがたいと思っています。
小林
 ECの個人事業者が増えていますが、商品情報が間違って掲載されている場合があり、成分や効能、機能などを間違えると大変な問題になりかねません。また、管理の温度帯なども守られていない可能性があります。こうした問題は業界全体で解決していく必要があり、正しい商品情報が伝わるようにするために、プラネットにも貢献いただければと思います。
塚本
 プラネットは流通のいろいろな役割を持った人が集まるハブのようになっており、毎年秋のユーザー会には私も参加しています。また、調査研究も興味深く、継続して新しいテーマに取り組んでいただきたいと期待しています。
田中
 プラネットは商流EDIで業界に貢献してきましたが、今後は物流EDIでも期待をしています。多品種少量・小口化が進むなどして入荷業務の負担が増えているので、物流の作業の生産性と精度を上げることで入荷がスムーズになるようにしてほしいと思います。
また、リアルタイムでの情報共有のため、データプラットフォームサービスの充実にも期待します。
石金
 ありがとうございます。商品マスタや物流EDI、データプラットフォームサービスなど、すでに取り組んでいるものや一部は始めているものもありますので、期待に応えられるようなスピード感で実現、あるいは精度を高めていきたいと考えています。製配販が集まる場もうまく活用していただけるよう、今後も提供してまいります。