株式会社プラネット

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温故知新 user's voice.html

少子高齢化と人口減、インバウンドの波、ネット通販の台頭、AIの進化やIoTの普及など業界を取り巻く環境は大きく変化しています。ユーザー様をお訪ねする本シリーズ、今回は牛乳石鹼共進社、宮崎悌二社長に、同社の新たな取り組みをお聞きするとともに、日用品業界におけるEDIサービスが果たす役割について、当社社長・田上正勝と意見交換を行いました。

ゼロから立ち上げた「販売レポート」サービス

田上
宮崎さんは当社のOBでもあり、今は当社のユーザーです。在籍時の思い出をお聞かせ願えますか。
宮崎
入社後3年ほどは営業職として、EDIサービスを中心にメーカーや卸売業を訪問していました。当時は「商品データベース」や「バイヤーズネット」などのWebサービスをスタートした頃でした。その後、ネットワーク企画部に異動し、新サービスの企画・開発に携わりました。当時の上司は田上さんで、いろいろ勉強させてもらいました。
田上
宮崎さんには「販売レポート」サービスをゼロから立ち上げてもらいました。販売データを拡販するにあたり、すでに販売データを導入しているメーカーのような過大なシステム投資をしなくても利用してもらえる簡便なサービを検討しようとしたところ、社内で「簡便なサービスではなく、現在と同等の高レベルのものを作らないといけない」などの反対意見が出てなかなか進みませんでした。そこで、ヒアリングをしてみようということになりましたね。
宮崎
実際にユーザーにヒアリングしたら「そこまで高度な仕組みは要らない」との声が多かったことを記憶しています。
田上
宮崎さんの尽力もあり、結果的にユーザーのニーズに合致した本当に役立つサービスが実現できました。「販売レポート」は今でも当社の重要なサービスの一つであり、当社がデータの活用サービスを本格的に始める契機にもなりました。思い返しても優秀な部下でした。本当はもっといてほしかった(笑)。

石鹸をつくり続けて110年、今も続ける「釜だき製法」

田上
インバウンド消費や越境ECが拡大し、「メイド・イン・ジャパン」の評価が高まっています。貴社の「赤箱」「青箱」もその一つですね。製品づくりではどのような点を重視していますか。
宮崎
昔ながらの「釜だき製法」を守り続けています。完成までに約一週間を要する手間ひまのかかる製法ですが、これでなければ「肌あたりがやさしい」「泡立ちやすくて洗い流しがさっぱり」といった牛乳石鹼の良さは実現できません。
田上
貴社は今年、創業110年を迎えられますが、そうしたこだわりが消費者に長く愛される所以ですね。
宮崎
3年程前から赤箱を洗顔でも使う女性が増えており、販売量は15年以降、毎年前年比二桁以上の増加で伸びています。昨年は発売90周年で、さまざまなイベントを行いました。京都市で期間限定ショップ、「赤箱AWA-YA」を開設した際には、想定していた1500人を大きく上回る1万2000人ものお客様にお越しいただきました。つくり手の想像以上の魅力が赤箱にあることに改めて気付かされました。ファンの裾野拡大を目指して、SNSで魅力を語り合っていただく「赤箱女子」キャンペーンなどを展開しています。
田上
お風呂文化を守る取り組みにも力を入れていますね。
宮崎
8年前から「牛乳石鹼のファンづくり活動」を展開し、その一環で「いい風呂の日(11月26日)」に銭湯でイベントを行っています。今年の1~2月には、大手セレクトショップ、ビームスとのコラボで都内の銭湯振興イベント「銭湯のススメ」に合わせて「橙箱(だいだいばこ)」を販売しました。

変化はチャンス
新たな価値を
消費者に提供していく

宮崎悌二氏
みやざき ていじ

1998年、慶應義塾大学総合政策学部卒業。
株式会社プラネット勤務(2001年8月〜 2006年12月)を経て2006年、牛乳石鹼共進社に入社。社長室室長、取締役社長室室長、常務取締役社長室室長、取締役副社長を歴任し2014年より現職。

消費者の価値観が変化、活躍する「商品データベース」

田上
日用品・化粧品業界を取り巻く環境変化や市場変化をどのように捉えていますか。
宮崎
一番感じているのは、消費者の価値観の変化です。「昭和」の販売戦略ツ ールの中心はテレビCMでした。なるべく多くの消費者にリーチし、「みんなが持っているなら私も欲しい」と思ってもらえばよかった。今は逆で、「みんなが持っていないものが欲しい」「誰も行ったことがない場所に行きたい」です。今後は大ヒットにつながるような「みんなから好かれる」商品をつくるのは難しいと思います。
田上
BtoBビジネスが主力の当社は消費者までの距離がやや遠いですが、一 番変化しているのはまさにその消費者です。当社では「Fromプラネット」という意識調査などを通じて消費者との接点を増やし、消費者行動の変化をユーザー様に役立つ形でご提供したいと考えています。
 台頭するネット通販への対応も重要なテーマです。リアル店舗は消費者に新しい価値をどう提供するかが課題です。
宮崎
メーカーも同様です。無人コンビニの「アマゾン・ゴー」などでは画像認識のシステムが不可欠ですから、今後はプラネットの「商品データベース」の画像データが活躍するのではないでしょうか。
田上
ありがとうございます。小売業の皆さんが共通でデータを使えるという点がこのサービスの強みです。コストを抑えつつ、いち早く新しいソリューションを立ち上げられるプラットフォームになれると嬉しいです。

サスティナブルな社会へ、環境負荷軽減に取り組む

田上
環境対応についてはいかがでしょうか。最新の排水設備を導入されたとお聞きしています。
宮崎
7年前までは石鹸製造工程から出る廃液を濃縮し、特定成分を回収したのち残渣を産業廃棄物として処理していました。
そこで、大阪ガスと共同開発で循環型の仕組みを構築しました。廃液中の成分を微生物が分解し、バイオガスを発生させ、そのガスを工場の燃料として再利用しています。この仕組みで産業廃棄物を年間で以前の約6分の1まで削減できました。
田上
素晴らしいですね。環境負荷を軽減しサスティナブルな社会を目指すという点では、物流の待機車両が業界の課題となっています。卸売業が全国各地にあった頃と違い、今は大型の物流センターができ、メーカーの倉庫も集約化の方向にあります。発送から納品までのリードタイムが短くなり、翌日納品が常態化すると、物流センターに各メ ーカーからのトラックが集中し、荷受けの順番を待つトラックの長い列ができてしまいます。
宮崎
卸売業さんにヒアリングすると、「翌日納品でなくていいよ」というところも案外多い……。現場の発注担当者は、今日発注したら明日届けてもらわなくてはならないという暗黙のルールに縛られているだけかもしれません。
田上
昔ながらのやり方を変えずにいたら、大きな問題になってしまったという例だと思います。プラネットユーザーという立場から、当社への評価をお聞かせいただけますか。

昨年、「赤箱」90周年を記念して京都・烏丸御池に開設した10日間の期間限定ショップ「赤箱WA-YA」。限定商品の販売や泡パック体験の提供を行い、人気を博した

牛乳石鹼の定番商品である「カウブランド赤箱」。ローズ調の香りで、豊かでクリーミィな泡、しっとりとした洗い上がりが特徴

プラットフォームとしての
役割を果たし業界を
元気にする

田上
宮崎
安価で信頼できるサービスを提供されているので、我々ユーザーは安心して利用できます。一方で「あって当たり前」になりつつあるので、先を見据えた新たなサービスの展開に期待しています。AIやIoTといった技術革新が進む中で、プラネットの「商品データベース」などは業界の大きな資産になると思います。
田上
日用品メーカーからは毎年約6000点もの新商品が発売されますが、消費者に認知されるのはほんの一握りで、多くはひっそりと市場から消えていきます。本当にもったいないことだと思います。
宮崎
商品の中には、20年売れるロングセラーもあれば、わずか1年で売れなくなるものもあります。結果として「売れる、売れない」の差が出るのは仕方のないことかもしれませんが、どの商品も等しく、メーカーが一生懸命に開発して世に送り出しています。
田上
メーカーが精魂込めてつくった新商品の情報がいち早く必要な人に届き、必要な場所で手に入るような新しいインフラを整えていきたいと考えています。

ビジネスチャンスは必ずある、「プラネットDNA」をいつまでも

田上
最後に貴社のビジョンを教えてください。
宮崎
これからの日本は少子高齢化と人口減を避けて通れません。石鹸の消費も減っていくでしょう。ただ、心配ばかりはしていません。例えば介護の現場で、介護職員は一日に何人もの入浴のお手伝いをします。粗悪な商品を使うとすぐに手が荒れるので、良い石鹸やシャンプーを使いたいという声があります。ビジネスチャンスは必ずあると考えています。
田上
世の中の変化を捉え、前向きにニーズを探るということですね。
宮崎
変化はチャンスと捉えた方が絶対に楽しいですから……。世の中の変化から目を離さないように意識しています。
田上
宮崎社長は当社のサービス開発の歴史を知る、いわば「プラネットDNA」ともいえるものをお持ちの経営者で、業界を幅広い視野で俯瞰できる方です。今後の日用品業界への提言にも期待しています。業界の課題解決に取り組む「場」として当社を活用していただきたいと考えており、今後も日用品業界の発展に貢献していきたいと思います。本日はありがとうございました。

「⽢⽔(かんすい)エコロジープラント」を導⼊した安⽥⼯場(⼤阪市)。⽯鹸の製造で⽣じる廃液(⽢⽔)の有機物からバイオガスを回収、⼯場のエネルギー源として使⽤する⽇本初のシステム

⾼品質の天然油脂を主原料に、熟練の技術で加熱、かくはん、静置の⼯程を約⼀週間かけ、製造する「釜だき製法」。この製法により、保湿成分が⾼く肌にやさしい⽯鹸が⽣まれる

■牛乳石鹼共進社株式会社
 代 表 者/代表取締役社長 宮崎 悌二
 創  業/ 1909年(明治42年)
 本  社/大阪市城東区今福西2丁目4番7号
 従業員数/ 350名