株式会社プラネット

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中国における消費財の越境流通インフラ整備を目指して

消費財流通業のグローバル展開

タイ・バンコク共同受注センター活用事例(前編)

今村 佳嗣
株式会社プラネット
執行役員
イノベーション推進室長

志賀野 芳宏
株式会社プラネット
イノベーション推進室

2017年1月、株式会社プラネットは、上港集団物流有限公司、株式会社シノジャパン、ヤマトホールディングス株式会社と共同で、日本の一般消費財メーカーおよび卸売業と中国の小売事業者・ECモール出展事業者を結びつけ、貿易・物流・情報・決済・販路拡大までを一貫して提供する越境流通プラットフォーム事業を行う合弁会社を設立しました。


(PLANET vanvan 2017年春号(Vol.114)掲載記事より)

一般消費財のマーケット拡大のために

 プラネット(以下、当社)は、消費財流通の情報インフラとなっているEDIサービスの安定的な供給、向上に努めるとともに、今後より一層業界の発展に寄与するため、2016年4月に「イノベーション推進室」を発足させました。同推進室は、既存の当社の事業から離れた自由な発想で、これから先の流通の未来を見据え、5年後、10年後に成果が出るような新しい取り組みに率先して挑戦し、業界に還元していくことを目的としています。
 「私どもが今やるべきこととして、大きく2つの方向性を考えています。一つはAIなどの新しいテクノロジーを流通業で活用する方法を見出し、業界の効率化に貢献すること。そしてもう一つが、一般消費財のマーケットの拡大への寄与です。今後、日本の人口が減少し市場が縮小する中、外国人消費者への販路拡大が一つの重要なポイントになってくるのは間違いありません。そこで当社では、これまで数回にわたり、訪日外国人によるインバウンド消費の実態調査を実施してきました」(イノベーション推進室長 今村佳嗣)。
 インバウンド消費の実態調査から、日本の高品質な消費財は海外での需要が旺盛で、特に中国の消費者から非常に高く評価・支持され、上海などの大都市圏で増加している中間富裕層を中心に、「日本製品に囲まれて生活したい」というニーズが高まっていることがわかりました。その一方、中国国内のマーケットで日本製品を安定して購入できる環境が整っていないという現状が浮かび上がってきました。
 そうした流れの中、当社は上海の大手国営企業である上港集団(中国)、シノジャパン(日本)、ヤマトホールディングス(日本)との共同で、日本から中国への一般消費財の輸出をサポートする、越境流通プラットフォーム事業を行う新会社を設立しました。


中国への商品流通の現状と問題点

 中国への日本製品の流通ルートは、訪日観光客による購入(インバウンド消費)以外に、さまざまなパターンがあります。主なものとしては、①ブローカーが日本で購入し中国で販売、②中国外の越境ECサイトからの購入、③現地法人あるいは商社を通じて中国国内の小売店やECサイトで購入、などがあげられます。これらの流通ルートは、個別最適化された(複雑かつ継続しづらい)取引が発生しやすく、流通全体のパフォーマンスが低下します。そのため、販売価格のチャネル間格差や、ブランド価値の毀損、予期せぬ問い合わせへの対応等、日本のメーカーにとってリスクの高い状況になっています。  また、日本のメーカーが単独で中国へ商品を輸出するのも容易ではありません。中国市場への進出を考える日本企業は多いものの、日本市場とは大きく異なる法規制、設備投資や人材の投入も必要なため、進出に踏み切るのは容易ではありません。
 進出した企業においても、不慣れな税関や検疫手続き、あるいは棚貸し(小売の店頭を棚ごと買ってその分の料金を払う仕組み)といった中国独自の商習慣による手間やコストの問題に悩まされる可能性があります。店頭やECサイトではFTA(自由貿易協定)が締結されている韓国製品や大手欧米メーカーの製品、一部の中国内メーカーによる模倣品との厳しい競争にさらされます。
 流通ルートの個別最適化の影響で、自社製品の販売先や販売実績を把握しづらくなっています。そのため、在庫の調整や製造計画が検討できず、結果的に十分な利益が確保できなくなり、中国市場から撤退する企業も散見されます。
 新会社は、こうした状況を打開し、さまざまな日本企業が中国への販路拡大を図れるよう越境流通インフラ面でのサポートを行い、安心、安全な日本の製品を継続的に購入していただける環境を整えることで、「中国の生活者の豊かな暮らしを日本製品が支える」お手伝いをしたいと考えています。


新会社とプラネットの役割

 新会社のサービスを利用した日本から上海への輸出では、日本メーカーの商品は、日本国内での流通と同様に卸売業を活用し、ヤマトホールディングスによって、新会社が運営する上海自由貿易地区の保税倉庫にまとめて運ばれます。通関、検疫などの貿易手続きはすべて新会社が行い、ここから中国国内の小売店、ECサイトへと商品が流れる仕組みです【図】。その際、日本のメーカーまたは卸売業は、金銭的負担の大きい棚貸し契約ではなく、一定の仕入れ割合で中国小売業と取引を結ぶことができます。
 今回の取り組みの中で、とくに重要な役割を果たすのが、当社のEDIに関する長年の知見を基に、国内ユーザーと新会社の間を接続するEDIサービスを開発提供すること、そして新会社と中国国内小売業との円滑な取引を支えるEDIサービスの開発・運用を当社が支援することです。日本で業務効率化の実績がある「標準化されたEDIサービス」の知見を中国の小売業との取引に適用することで、日本のメーカー、卸売業は、中国の小売店ごとの売り上げや在庫状況を把握することが可能になり、効率的な製造計画や、販売方法の最適化を図ることができます。こうした日本型商取引が中国国内で定着すれば、継続的な商品流通が実現し、正規の日本製品を適正価格で安定的に販売できるようになります。すべての商品はデータとひもづいているため、流通過程で模倣品が入りこむ可能性を極小化できます。
 「今回の取り組みによって、大手メーカーだけでなく、中小メーカーの製品も、中国での販売におけるハードルが下がります。多様性は日本製品の魅力の一つであり、たくさんの日本のメーカー、卸売業にこの仕組みを積極的にご活用いただいて、オールジャパンで中国マーケットに日本製品を訴求し、魅力的な棚割提案をして、業界全体の市場拡大につなげていっていただきたいと思います」(イノベーション推進室 志賀野芳宏)。  2017年1月に設立された新会社は、上海への日本製品輸出開始に向けて、準備を進めております。
 これからも当社は広く業界の皆様のご意見を伺って、よりお役に立てるサービスの提供に取り組んでまいります。



会社概要

会 社 名
中  名:上海上港瀛東商貿有限公司
(シャンハイジョウコウエイトウショウボウ)
英  名:Shanggang EDI-CHINA Trading Co., Ltd.
所 在 地
中国上海市宝山区
資 本 金
3,000万人民元(約464百万円 ※ 1人民元=15.46円で試算 )
董 事 長
劉煒(上港集団物流有限公司 総経理)
総 経 理
李樹寧(株式会社シノジャパン 会長)
人   員
董事6名、社員15名(予定)
設 立 日
2017年1月11日 
事 業 内 容
国際貿易・物流及び倉庫サービス・ネットワーク技術
及び物流情報技術の提供他