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会長の読書

日本破綻 (藤巻健史著、講談社)

 藤巻健史は、モルガン銀行時代「伝説のトレーダー」として名を馳せていた。弟の藤巻幸夫も、伊勢丹時代に伝説のバイヤーと言われていた。現在は兄弟で藤巻兄弟社を経営している。

 藤巻健史は、比較的前向きな経済評論が多かったが、本書では一転して日本経済が危機を迎える可能が高くなってきたと警鐘を鳴らしている。

 日本政府の多額の国債発行もいよいよ限界に達し、国債未消化・長期金利上昇が起こり、ハイパーインフレとなると言うことは十数年前から多くの識者によって指摘されていたことである。しかし、ハイパーインフレは起こっていない。このため、「日本の国債は引き受け手が国内であるため、へそくりを亭主が借りているようなもの」との理屈で、日本には1440兆円の国内貯蓄があるから大丈夫との発言が目に付く。だが、藤巻はこの理屈はミスリードにつながりかねないと否定している。へそくり論は、近頃売れっ子の勝間和代などが唱え、巷間に流布している。(本書では勝間和代の名前を挙げているわけではない)

 2010年度の国債発行額は44兆円、これによって国の累積赤字は872兆円に達することになるが、2011年度も同等の規模の国債発行が避けられない見込みである。しかも、いわゆる埋蔵金はすでに掘り出され、来年度は期待できそうもない。危機は迫って来ていると、藤巻は警告している。

 “日本破綻”のきっかけは、売りに出された国債が売れ残るいわゆる未達から始まる。本書では幸田真音の小説「日本国債」(講談社文庫)を引用して、いかにして金融市場でパニックが起こるかを描いている。そして、長期金利が跳ね上がり、急速な円安、デフォルトもありえると記述されている。

 本書は、ただ単に危機を煽るのではなく、いかにしたら危機を回避できるかについても述べている。藤巻は、まずは高すぎる円を安くすることが必要であると強調している。韓国が大幅なウォン安で甦ったように、日本も円安になれば急速な経済回復も可能だとしている。

 なぜ、日本が世界に比べて停滞が続いているのに、円が下がらないかについて、日本は社会主義のような国だから市場機能が働いていないと述べているが、それは政府当局がどのような手を打っているからそうなっているのかと言う点に関しての説明が見当たらない。この点について藤巻の見解を聞きたいところである。

 国際的金融世界で長年活躍してきた藤巻が、警告を発していることは傾聴すべきことで、そろそろ銀行預金を下ろして金の延べ棒にしておいた方がいいのかなと言う気になってきた。

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