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会長の読書

最後の黄金時代が来た かくて日本はツキまくる (今井澂著、幸福の科学出版)

 今井澂(きよし)氏は、山一証券、日本債券信用銀行を経て独立したエコノミストである。1990年代にヘッジファンドの評論で注目された。本書では、日本経済のシナリオが変わったとし、2010年から2020年頃までは、日本の黄金時代が到来すると論じている。

 その根拠のひとつとして、現在の国内の土地の値上りを挙げている。第二次ベビーブーマーがいわゆる住宅取得人口のピークとなるのが2013年頃で、引き続き景気の底上げ要因となると記している。

 そして世界的な背景として、中国を筆頭にBRICs(ブラジル、ロシア、インド)、更にはVISTA(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)の成長が続き、日本の生産技術は引く手あまたになるためであるとしている。アメリカがサブプライム問題で失速しても、世界の経済成長におけるアメリカの占める割合は大幅に低下しているため、日本に対する影響は軽微であろうと論じている。

 実際、日本の高品質の鉄の輸出が伸び、自動車や造船、工作機械も伸張し、重厚長大が復活している。また海運も活況を呈し、省エネ技術も伸びるに違いない。多くの識者は、中国のカントリーリスクを指摘しているが、今井氏は中国が憲法を改正したことを挙げて「どうやら中国の近代化は本物らしい」と見ている。

 「賃金が上がらない限りインフレはない」と主張する。一部で「チープレイバーギフト」と呼んでいる人もいるという発展途上国の労働賃金の安さが、日本国内の賃金上昇も抑え、インフレ発生を防止してきたということだろう。2000年前後に、貨幣供給量の拡大と財政悪化で悪性インフレが起こるとの警戒論が盛んに唱えられたが、実際は起こらなかったことを見ると、一理あるような気がする。しかし、急速な原油の高騰によるインフレ懸念については本書では触れられていない。

 日本の黄金時代が来るというと、楽観的な予測本ともいえるが、“最後の”と言うところが「味噌」で、2020年以降は不透明であり、停滞もありうるとも書かれている。それは、地政学的な北朝鮮リスク、やはりあるかもしれない中国リスク、少子高齢化、格差社会の弊害などが日本社会に悪影響をもたらす可能性などが要因である。

 日本経済の構造についてある程度知識のある人が、日本の近未来の予測の一つとして読む本としては面白いし、かなり読み易い本である。

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