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会長の読書

日はまた昇る 日本のこれからの15年 (ビル・エモット著、草思社)

 ビル・エモットは「日はまた沈む」を1990年に書いたが、それから17年、今度は逆のタイトルである本書「日はまた昇る」を著した。

 前著は日本の不良債権問題などを指摘し、日本経済の停滞を予言したが、今回は日本経済の本来持っている「優れた教育、進んだ技術、企業内の協調性の高さ」によって復調を始めたとしている。

 かつて、日本は驚異的経済成長を示し、一時は“Japan as No.1”とまで言われ、欧米先進国から高く評価された。その日本が1990年前後にバブル崩壊してから、長きにわたる低迷の時期を過ごすことになった。世界からの評価が急落、また国内においても自信喪失感が蔓延した。「失われた10年(あるいは15年)」と言われ、日本は衰退し二流国になるとも言われるほどであった。

 ビル・エモットは「日はまた沈む」をこの停滞の時期を迎える直前に出版したため、大いに評価された。その論拠として、金あまりの企業によって根拠に乏しい投資が過剰に行われていること、金融機関の不良債権の増大やモラルハザードなどをあげていた。日本人としては耳が痛いことが書かれていたが説得力のある本だった。

 その著者が「日はまた昇る」というわけだから、日本人としては期待して読んだ人が多いと思われる。しかし、本書の中身は「昇る」と言うほどのことは書かれておらず、耳に心地よいことが書かれていると思った読者は少々期待が外れたのではないだろうか。

 「また昇る」の論拠としては不良債権の圧縮が進んだこと、企業業績が回復したこと、雇用の増加などをあげている。それが力強く歩みはじめたわけではなく、兆候が見られるようになったというような表現で、非常に慎重に書かれているという印象が強い。日本の変化は劇的改革ではなく、非常にゆっくりとしたものだったし、これからもそうだろうと、極めて慎重な記述である。

 前著は経済書としての色合いが強かったが、本著は政治面の記述が多くを占めている。小泉前総理による解散総選挙の圧勝と改革について記述しているが、その改革が継承されるか懸念を示している。

 また、靖国問題、北朝鮮、中国との摩擦など政治面の不透明さを論じることに多くのページを割いている。このように日本を取り巻く様々な事象に触れており、かなりの日本通と思われるが、通信費が依然として割高と述べるなど、少々事実誤認の部分もあるようだ。しかし、欧米人が日本をどのように見ているかがよく分かる書であることは確かである。

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