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会長の読書

中国が世界をメチャクチャにする (ジェームズ・キング著、草思社)

 著者のジェームズ・キングは、中国の山東大学に留学し、北京に在住するジャーナリスト。多くの中国人と直接会話し、李白や屈原の詩をも引用できるという稀有な欧米人である。もちろん現地の新聞にも数多く眼を通している。したがって、多くの事件に精通しており、臨場感のある内容となっている。

 われわれ日本人は、中国が急速に経済発展している一方で、偽物商品や汚職の蔓延、多数の暴動が起こっているらしいことを耳にしている。本書ではこうした現象を、具体的事例を多く交えて記述している。ただし、暴動についてはわずか3行しか触れていないことが、少々気になる。

 驚くべき事例として、村の党書記長の娘が、成績がよかった同級生の戸籍を盗用して一流大学に入学し一流銀行に就職し部長にまで昇進したという話を取り上げている。その娘の党書記長家族が意図的に画策し、周辺の人達にも協力させ、いかにして優秀な生徒の進学の道を閉ざすことになったかを詳細に記述している。

 粉ミルクの偽物が実に40社によって作られ、多くの乳児を死に至らしめた事件(2008年のメラミン入粉ミルク事件以前にあった事件)をはじめ、中国ではニセのオートバイ・家電・化粧品などあらゆる偽物商品が氾濫しているが、著者は偽物商品と超廉価品の巨大市場となっている「義烏(ギウ)」の町をレポートしている。HONDA ならぬHONGDAが売られ、GUCCIならぬGUSSI 、YSL(イヴサンローラン)ならぬVSLやLYSという看板が並び、 HyattならぬHiyatホテルがあり、多数のバイヤーを世界から集めている「義烏」。ここを発信源として、世界中に安価な商品が流出し、多くの国々の国内産業に混乱をもたらしているという。

 世界に影響を与えているのは中国製品ばかりではない。中国人の大量流入によって産業に大きな打撃を与えられた町を紹介している。中国人が2万人も住みついてしまったイタリアのプラートである。

 プラートは700年間もヨーロッパの織物業の中心であったが、イタリア人の半分の賃金で倍働く中国人によって伝統的織物業は半減してしまった。2000年にドイツで56人の中国人がコンテナの中で窒息死しているのが見つかるという事件があったが、これは蛇頭による不法入国者輸送中の事故と目されている。プラートにやってきた中国人も蛇頭の手引きで命を賭してやって来た人たちといわれている。

 利己的な拝金主義の横行は、重大な環境問題も引き起こしている。淮河(ワイガ)は、周辺の無秩序に建てられた数万もの工場群の汚水による極度の汚染で、飲用はもちろん灌漑用水としても使えないほどに毒性が強くなってしまい、周辺住民の健康を蝕んでいる。中国の燃料効率の悪い発電所や多数の工場は、やがて地球全体に大きな環境ストレスを与えることになるだろう。

 このような巨大国家中国を国際社会の秩序ある一員としてどのように迎え入れるかが、今後の困難な問題となることは間違いない。

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