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玉生弘昌(名誉会長)の読書

高金利・高インフレ時代の到来! エブリシング・クラッシュと新秩序 (エミン・ユルマズ著、集英社)

 トルコ生まれのエミン・ユルマズは、東京大学に留学し生物学を学び、野村証券に就職、現在は経済アナリストとして活躍している。彼のYouTubeを見ると、非常に明快で分かりやすく世界の経済の動向を説明している。
 トランプが再びアメリカの大統領になり、世界中の国に関税を課すことを宣言したため、株が暴落し、世界の貿易は混乱するものと誰もが思い込んだ。しかし、ユルマズは、混乱はあるだろうが、いずれ新たな均衡に落ち着くものとみなしている。アメリカは時々間違った政策を展開するが、それを修正し新たな秩序を作ってきたと述べている。
 ユルマズは、トランプの品(ひん)のなさについて批判的である。トランプが就任直前にトランプコインを、メラニア夫人もメラニアコインを発行したことについて、まったくの公私混同であると指摘している。トランプコインの多くは、トランプの支持者が購入しているが、これはトランプに対する賄賂だとしている。もし、中国政府がトランプの機嫌を取るためにトランプコインを大量購入すれば、トランプは大儲けすることになる。まさに、これは国際的賄賂になる。このようなことを大統領がやっていいものだろうかというわけである。
 トランプ関税は、国内の貧富の格差を広げることになると指摘している。関税が上がると、国内物価の上昇を招き、物価の上昇は低所得者の方がダメージが大きい。また、関税の増税は税収の増加をもたらし、それをもってトランプは減税を実施すると考えられるが、その恩恵を受けるのは企業と高額所得者であるというわけである。
 中国封じ込めについては、バイデンの時から始まっていてトランプもそれを継承している。これを見越した西側諸国は、新たなサプライチェーンを構築し始めている。そのキーとなる国は日本であると記している。
 かつての米ロ冷戦の時に、日本は大きく成長した。いわば、漁夫の利を得る存在だった。その後、ベルリンの壁崩壊(1989年)およびソビエト連邦の終焉(1991年)によって米ロ冷戦が終息すると、日本経済は停滞し始めた。今後、米中冷戦時代になると、再び日本は漁夫の利を享受することになるだろうというわけである。
 今年の中間選挙では、共和党は大きく負ける可能性があると見ている。フィナンシャル・タイムズのコラムで、TACO(Trump Always Chickens Out)と指摘されたが、トランプは臆病だというわけである。このTACOがアメリカで流行語になっているが、これは、支持者の失望感の表れである。したがって、2026年11月の中間選挙で共和党は大きく議席を減らすものと見ている。
 ところで、ちょっと気になるのは、台湾有事の可能性が高まったと記されていることである。中国が、トランプはディールは好むが、本当の戦争は避けるのではないかと見透かしたとき、また、トランプがウクライナの東方2州の割譲を認めて停戦が行われるようになると、中国は台湾侵攻をもくろむ可能性が高まるというわけである。
 さて、本書にはないが、最近のテレビで、ユルマズは8月に高値(日経平均43,700円)をつけた日本株はさらに伸長して5万円に達するのではないかと言っている。前述したように、日本は新たなサプライチェーンの中核になることと、比較的安い日本株市場に世界の資金が流入する可能性が高いからだということである。

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