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玉生弘昌(名誉会長)の読書

聖書の同盟 アメリカはなぜユダヤ国を支援するのか (船津 靖著、河出書房新社)

 ユダヤ国とはイスラエルのことである。イスラエルは1948年の建国以来、幾度となく戦争をしている。記憶に新しいのは、2023年ガザ地区への攻撃と2025年6月のイランの核施設への急襲である。第一次から四次の中東戦争など、イスラエルは、1948年に建国して80年なのに、実に多くの戦争をしている。そして、その戦争をアメリカは常に支持している。それは、なぜなのだろうか。
 その遠因を辿ると、実に5千年も昔の旧約聖書に遡(さかのぼ)らなければならない。旧約聖書の『出エジプト記』に、モーゼが神の啓示を受けて、エジプトで虐げられていたユダヤ人を率いて、神が約束してくれた「約束の地カナン」にたどり着いたと記述されていることから始まる。「約束の地カナン」とは、ヨルダン川西岸のパレスチナのことである。その地で、英雄ダビデ王とソロモン王によってユダヤ王国を築くのだが、ヒッタイト、バビロンなどの攻撃を受けて滅亡してしまう。それ以来、ユダヤ人は国を持たず、差別されて暮らすことになる。ロシアやヨーロッパなどでは、土地を持てず、ギルドなどの組合にも入れず、商業と金融業で生活するしかなかった。
 シェイクスピアの『ベニスの商人』の金貸しシャイロックのように、嫌われ差別されていたのである。さらに、ユダヤ人迫害に拍車をかけたのは、ロシアで作られた偽書『シオン賢者の議定書』(1903年ごろ作成)であった。ユダヤ人はひそかに世界征服をたくらんでいるという内容の本である。明らかにユダヤ人を貶(おとし)めるための創作であった。しかし、これがヨーロッパで広く読まれ、ナチスドイツのユダヤ人抹殺のホロコーストにつながった。
 ヨーロッパで迫害されたユダヤ人の多くが、アメリカに逃れた。アインシュタインやドラッガーなどがアメリカに渡っている。また、多くのユダヤ人が「約束の地カナン」に移り住み街を作り、国として認めるよう運動を始めた。そして、イギリスが認め、アメリカも同調し国連でイスラエル国が認められた。
 イギリスがイスラエルを認めたのは、第一次大戦から第二次大戦の戦費をロスチャイルド家がイギリスに提供したことが影響していると言われている。言うまでもなく、ロスチャイルドはユダヤ系の金融業である。
 ヨーロッパからパレスチナに渡り、開拓して国を作るというプロセスは、アメリカ建国によく似ているため、アメリカ人は現在のユダヤ人にシンパシーを抱いているからだと、本書には書いてある。また、キッシンジャーのようにアメリカ政府の中枢にユダヤ人が多くいるためとも考えられる。
 ところで、2025年6月13日、イスラエルがイランを空爆した。イランの核兵器開発を阻止するためである。そして、同月21日夜、アメリカもイランの核開発施設を爆撃した。地下の施設も破壊できるという特殊爆弾バンカーバスターを用いて地下工場を破壊した。ネタニヤフ首相は「これで、イランの核兵器開発を遅らせることができた」、トランプ大統領は「イランの核開発施設を完全に破壊した」と述べている。
 これは、西側の国としてはイスラム教の国には絶対に核兵器を持たせたくないからである。9.11のニューヨーク世界貿易センタービルのテロ、パリの同時多発テロなど、イスラム武装組織によるテロは今後も起こるものと考えられる中で、そうしたテロ組織が核兵器を持つようになると、何が起こるかわからない。したがって、西側のキリスト教国としては、イスラム組織は、何が何でも核兵器を持たせないようにすることは共通の認識なのである。
 パレスチナの地にユダヤ人の国が国連で認められたといえども、周辺はイスラム教の国々である。これからも、争いが絶えず起こるに違いない。

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