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会長の読書

リボルバー (原田マハ著、幻冬舎)

 リボルバーとは、回転式の弾倉をもつ拳銃のことである。
 主人公・高遠冴(サエ)が勤めるパリのオークションハウスに、錆びたリボルバーが持ち込まれるところから物語が始まる。それは、ゴッホにまつわる拳銃だと言う。
 ご承知の通り、ゴッホは拳銃で自殺を遂げたということになっている。ゴッホは世界的に最も人気のある画家で、作品がオークションにかけられると、100億円を超える値が付く。本当にゴッホに関わる拳銃であれば、好事家の関心を呼び、高値が付くものと思われる。
 有名なロンドンのオークションハウス・クリスティーズでは、ナポレオンの死亡診断書、アメリカ初代大統領のワシントンの演説草稿など、絵画でないものも競売にかけられている。つまり、オークションハウスは、美術作品だけではなく、いわくつきの古物もたびたび取り扱われている。
 持ち込まれた拳銃が、果たして本物なのか調べる必要がある。早速、サエは社長ギローと同僚のフィリップとで、パリ郊外のオーヴェール・シュル・オワーズ村に調査に赴き、今や観光名所となっている食堂ラヴー亭を訪れる。このラヴー亭の二階にゴッホが下宿していた。狭い部屋で、ゴッホはここで亡くなり、葬儀もここで行われたという。まさにゴッホのファンにとっては聖地である。
 ゴッホとゴーギャンはアルルで共同生活したことは知られていることである。わずか二ヶ月の共同生活は、お互いに高めあったと考えられているが、ゴッホの異常な性格にゴーギャンが耐えられず、別れることになる。駅に向かったゴーギャンを追い駆けたゴッホは、その時、自らの耳を切ったのは有名な事件である。
 この事件の後に、オワーズ村に引っ越したゴッホは、一年半後に拳銃自殺をしたということになっている。拳銃自殺と言えば、頭を撃つか心臓を撃つものと思われるのだが、ゴッホは腹部に弾があたって2日後に亡くなっている。この状況をもって、何者かに撃たれたと推測する人も多い。本書でも、自殺とは違う推理がなされている。
 社長のギローは、高値で売れることを期待するのだが、さて、どうなるかは読んでのお楽しみである。
 リボルバーは回転する弾倉を見れば、弾が装填されているかはすぐにわかる。本物でもモデルガンでも手に取ったことがある人であれば知っていることなのだが、本書では弾が入っていることを知らずに事故が起こったとなっているのが、少々気になった。でも、これは細事で、こだわらずに読めばいい。
 さて、著者の原田マハの本来の職業は、美術館や博物館で鑑定を行うキュレーターで、その専門知識を活かして、美術の世界の小説を多数著わしている。「風神雷神」、「美しき愚かものたちのタブロー」や「リーチ先生」など多くの作品が人気を博しているが、本書も10万部に及ぶベストセラーになっている。美術好きの方には、ぜひ読んでほしい一冊である。

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