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会長の読書

同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか (鴻上尚史・佐藤直樹著、講談社現代新書)

 新型コロナウイルスが蔓延し、非常事態宣言が出され、外出の自粛、三密の回避が要請された。すると、日本人の大半が自宅にこもり、お店も休業をした。そんな中で、パチンコ店が自粛せずに店を開いていたところ、多くの人が非難をし、中には店の前で抗議をする人もいた。また、マスクをしないで街を歩いていると注意する人、いわゆるマスク警察と呼ばれる人も現れた。
 皆と違うことをやる人を許さず、同調を強要するという周辺からの圧力を、本書で「同調圧力」と呼んでいる。
 その根底には世間という「日本人が集団になった時に発生する力学」があると論じている。万葉集の山上憶良の和歌「世間(よのなか)を憂(う)しとやさしと思へども飛び立ちかねつ鳥にしあらねば」を紹介し、千年以上も前から日本人には世間という意識があると解説している。
 コロナに感染した人が非難され、芸能人が感染すると謝罪をするという現象は、世間体が悪い、世間様に申し訳ないという意識から来ている。また、鴻上がコロナ禍で困窮している演劇界への支援を SNS で発信したところ、「おまえらだけが特別だと思っているのか」、「好きなことをやっているのだから自業自得だ」などの非難が寄せられたそうだ。コロナによって「同調圧力」が一層強まっていると述べている。ネットの中で誹謗中傷する人は、世間のルールで判断し、そこには社会のルールがあることを忘れていると分析している。
 こうした集団主義的現象は日本的で、日本人はいわゆるウチとソトを区別しているためである。ウチの人には親切でも、ソトの人には冷たく当たるという集団の原理が、コロナ禍の中で一層はっきりしてきている。その結果、困窮している人をますます苦しくさせてしまっているようだ。
 欧米では、マスクをしなかったり大勢で集まったりすることを禁じ、違反すると罰金を科する国が多い。要請ではなく、強制である。それでも、マスクに反対するデモが起こるなど、従順ではない。日本では、政府あるいは知事から要請が伝えられ、国民はそれに従った。まことに日本人は従順で、その結果、日本の新型コロナウイルスへの対応は成果をあげていると評価する向きもある。いわゆるガバナビリティーが良いわけで、日本人の良さでもあると思うのだが、個々人としては集団に同調しなければならず、好きな行動ができないため、息苦しさを感じるのは確かである。
 やはり、今の時期は、仲間内だけではなく誰にでも思いやりを持つことが必要なのだろう。

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