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会長の読書

MMT現代貨幣理論入門 (L・ランダル・レイ著、東洋経済新報社)

 いま、MMT (Modern Money Theory)が話題になっている。アメリカの経済学者ステファニー・ケルトン教授などが主張し始めた新しい貨幣論で「貨幣を発行できる国の財政は破綻しない」という日本の大きな財政赤字に光明を与えてくれるような学説である。
 従来の経済学者達は、貨幣は人々が信用して対価として受け取るから、交換機能を果たしていると論じていた。しかし、MMTでは、国家が税金として自国の貨幣を受け取るから、人々が手に入れようとする。だから、通用するのだと説明している。つまり、税金や罰金あるいは国家サービスの利用料として貨幣が使えるということが、紙切れが通用している理由だというわけである。
 一応、私は大学で経済学を学び、しかも貨幣論を専攻したのだが、国家が税金として受け取るから貨幣が通用するという説明は初めて聞いた。言われてみるとその通りで、国民に使わせる目的で発行している紙幣を、税金として受け取るのは当たり前のことである。
 また、国庫は税金収入を得て、それを元に歳出をしているわけではない、先に紙幣を発行して、その後からその紙幣を税金として得るのであるという説明にも、目を開かせられた。
 国庫と家計とは厳然とした違いがあると記されている。たしかに、国は紙幣を発行できるが、家計は勝手にクーポンを印刷するわけにはいかない。
 日本政府は多くの国債を発行して、多額の赤字を抱えているため、いずれ破綻すると言われ始めて30年近くも経っている。しかし、まったく破綻の気配もない。政府の発行する国債は毎回完売しているし、金利も上がっていない。さらに、貨幣過剰によるインフレの兆候もない。どうやら、日本はMMTが当てはまるようである。
 日本の財政破綻論を唱えている学者先生と財務省の人達は、「収入以上の支出を続けていたら破産する家計と同じだ」、「子孫に借金を残してはいけない」と説明していた。しかし、家計と国庫とは明らかに違う。また、国債を引き受けてお金を貸しているのは日本国民の方であるから、子孫に借金が残るのではなく債権が残るのである。どうも詭弁だったようである。
 国際的に通用する通貨、ドル・円などについては、多く発行しても破綻しないが、しかし、外国が受け取ってくれない通貨は、発行すればするほど為替レートが上がってしまい、インフレになる。発展途上国では、生活物資を輸入しなければならないため、通貨の下落は深刻である。このMMTは、国際的に強い通貨を持つ国にとっては有利になるようだが、そうでない国にとっては、厳しいことになりそうな理論である。
 これからの国際経済を読み解くには、MMTは欠かせないことになるだろう。

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