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会長の読書

渋沢栄一 日本の経営哲学を確立した男 (山本七平著、さくら舎)

 渋沢栄一についての本。しかも、山本七平が書いている。
 山本七平は「日本人とユダヤ人」(1970年)という300万部ものベストセラーを著した人である。当初は、この「日本人とユダヤ人」の著者はイザヤ・ベンダサンというユダヤ人だということだったが、出版元の「山本書店」の店主山本七平であったことは、今や公知のこととなっている。
 山本は書物の海の中の博覧強記というべき人である。
その山本七平が書いた渋沢栄一の本! きっと面白いに違いないと買って読むことにした。

 渋沢栄一(1840~1931)は、明治維新後多くの会社設立に関与し、日本経済の礎を築いた偉人である。日本の金融制度の基礎を築き、王子製紙、東京ガスを初め約500もの会社設立に関与している。
 しかし、若いころの渋沢栄一は水戸学に傾倒し高崎城を奪い攘夷を決行しようとしていた壮士であったことはあまり知られていない。この企ては従弟に説得され中止、その後京都に遊学し、考えが変わり、一橋慶喜に仕え幕臣になる。
そして、水戸藩主徳川明武に随行しパリを訪問、またまた大きく考えが変わる。
 山本七平は、このように渋沢の考えが二転三転したことと、一方で、明治政府から誘われた時には、政府役人になることを断固として断っていることを前向きに評価し不易流行と言っている。きっと、渋沢栄一は一つ深いところに理想を持った信念の人だったのだろう。
 本の中ほどは論語についての記述が占めている。渋沢栄一がビジネスについて「右手に算盤、左手に論語」と言ったことは有名であるが、山本七平も論語についての本を書いているので、単なる論語についての解説ではない。世界の思想を背景として一歩引いた視線で記述していることは、さすがである。
 特に、孔子について中国人と日本人で解釈が異なっていることについての解説は、なるほどと思わせる。

 最終章の「日本人への十二戒」は、山本七平が日本人に言い遺したかった警鐘なのだろう。
  第一戒「畏れの喪失は文明の喪失である」
  第二戒「過ちを犯さぬために歴史に学べ」
  第三戒「条件反射的な日本のマスコミを信用するなかれ」
  第四戒「日本人は欧米人と同じでないことを知れ」 など十二戒。
 更に知りたい読者は、本書をお読みいただきたい。

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