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会長の読書

流通革命 (林 周二著、中公新書)

 「流通革命」は半世紀も前の1962年に出版された本である。当時、問屋無用論の本として評判になった。近頃、この本が批判にさらされている。久しぶりに再読してみた。

 この大ベストセラー「流通革命」に、菱食(現:三菱食品)の中興の祖、廣田正氏は大変な衝撃を受けたと講演で述べている。温厚な方なので、否定的な表現はなさらないが、これに突き動かされたことがあったのだろう。

  近頃、「卸は結局なくならなかった」「いまでも卸は成長し利益を上げている」「メーカーも小売業もメリットを受けている」など、なかには、「流通革命」は流通業に害を与えたという論調のものもある。極めつけは、堤清二氏の「流通革命の行き着く先は、全員が国民服を着るということだ」というコメントではなかろうか。(出典:中公新書「無印ニッポン」堤清二・三浦展著)  半世紀前は、大量生産・大量消費が始まった時期である。本書は、この大量の商品をさばくには中間流通業の近代化が必要であり、既存の旧態依然たる問屋では無理だから淘汰されるべきである、という論旨である。林氏の表現では「問屋滅亡論は、今日の問屋そのものが自動的に滅亡するという安易な論としてではなく、滅亡させるべきであるという政策論の意味で著者は賛意を表する。」と記している。

 「流通革命」には、いくつか気になる記述がある。

 「各業界とも、有力メーカーや進歩的小売商たちは、問屋をうとんずる傾向が富に顕著になり、焦燥感に駆られた問屋側も、問屋連盟などの名で「問屋無用論に反駁する」などという鬱憤ばらしの声明文(これらの内容は、今日の問屋経営者の頭脳レベルを反映して、論理の貧弱なものが多い。)を発表したりする有様である。」(原文のまま)

 問屋業は知的に劣っていると、林氏は思っていたようだ。

 「合理化競争の結果、浮き出た余剰労働力をヨリ高い生産性を有する産業、とくに重工業部門へ投入することが可能になる」と書かれている部分がある。これは最初から流通業界を下に見ている。科学の粋を集めた重工業が良いものであって、流通業は付属的な必要悪のような存在と見ているようにも思える。いわゆる上から目線で、本当に流通業界のことを思って論じているようには思えない。

 流通業の有識者は、当時から悔しい思いをしているため、来年の出版50周年には、さらに多くの論評が噴出するに違いない。

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