基幹EDI
販売データは宝の山、計画立案に活かしたい
- 宇津救命丸株式会社
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専務取締役
宇津 善行さん営業部長
佐藤 勉さん
東京都千代田区神田駿河台3-3
http://www.uzukyumeigan.co.jp/
(PLANETvanvan 2014年秋号(Vol.104) 掲載記事より)※役職等は取材当時のものです。
宇津救命丸株式会社は、より戦略的な販売データ活用を目指して、2012年からプラネットの基幹EDIサービスの利用を開始した。
現在のご利用状況と今後の展望についてお話をうかがった。
受注業務の効率化も視野に入れ、基幹EDIサービスを採用
1597年創業の宇津救命丸株式会社。社名にもなっている「宇津救命丸」は、江戸時代初期に創製された家伝薬で、子どもの夜泣き、かんむし、ひきつけの特効薬として400年にわたって人々に親しまれ続けてきた超ロングセラー商品である。この「宇津救命丸」を中核に、近年ではかぜ関連商品や栄養剤、おなかの薬、スキンケア商品など幅広いラインナップを充実させ、小児薬の総合メーカーとしての確かな地位を築きあげている。
同社は、2009年からOTC医薬品業界のVANを利用して、小売店への販売実績の管理を行ってきた。しかし、そこから提供される情報は、小売店の店舗コードが卸売業ごとに異なるため、自社で使えるようにするには、一つひとつ手作業でコードを置き換えて自社システムに取り込む必要があった。そのため、小売店への販売状況を把握するのに時間がかかり、作業自体も大きな負担となっていた。
「いずれは受注業務の省力化に取り組みたいと考えていたので、プラネットの基幹EDIサービスにはもともと関心がありました。そこで販売データ接続についてプラネットに相談したところ、使い勝手がよさそうでしたので、これを機に基幹EDIへと切り替えることにしたのです」と専務取締役の宇津善行さんは語る。
2012年9月に最初の打ち合わせを行い、10月には販売データの接続を開始。データ形式は、PCとの親和性の高いTSV(タブ区切りの可変長フォーマット)を採用した。
「受け取ったデータを自社の管理項目に紐付けするだけで、あとはそのまま使えるので、メンテナンスの負荷が減り、作業のストレスがなくなりました。やはり標準取引先コードというのは大きな魅力です」(宇津専務)。
有用なデータをどう深掘りするか、が課題
現在は、主に店舗ごとの納品数量や返品状況の確認、季節商品が立ち上がった際の店頭配荷率の確認などに販売データを活用している。その詳細について、営業部長の佐藤勉さんは次のように語る。
「今のところ、特にお取引高の多いキーアカウントの実績管理が中心です。たとえばある商品が、前年同月にどの店にいくつ納品されているかを数字で追いかけ、今期の売上目標をどう達成するかを検討する際の参考にしています。卸売業様がEDIをご利用でない場合、月1回、媒体や紙で販売情報を受け取り、それをデータ化しなければいけないことを考えると、納品から1、2日で実績数値を確認できる販売データは実用性、有用性が格段に高い、まさに宝の山だと思います」。
ただし、せっかく有用なデータを受け取っても、それを十分に活用しきれていないのが悩みだという。
「営業担当者はどうしても売上実績を気にしてしまいますが、本来は実績管理だけでなく、実績拡大のための営業計画の立案にこそ、販売データを活かすべきだと思います。残念ながら我々にはまだそこまでのノウハウがなく、日々の忙しさもあって、なかなかデータを深掘りできていないのが実情です」(佐藤部長)。
営業担当が実績の拡大をはかるには、さまざまな切り口がある。たとえば、すでに取引のある店舗でSKUを増やすなら、同じエリアの同規模小売店での納品実績が参考になるだろう。あるいは特定の商品の配荷店を増やすなら、取引先データベースのクリッピングサービスを活用して、まだ取引のない小売店をあぶり出すことが有効かもしれない。そのように目的に応じてうまくデータを活用できるようになることが、今後の大きな課題だという。宇津専務も続けてこう語った。
「大がかりなシステムをつくらなくても、アイデアさえあれば、営業が使いなれたエクセルで十分にデータ活用はできるはずです。私たちは営業に、新しい考え方を提案したい。
その意味でも、他のメーカーが販売データをどのように使っているのか、非常に興味があります。プラネットにはぜひ具体的な活用事例を一つでも多く紹介してほしいですね」。
取り扱い店舗確認の効率アップで、ユーザーへの細やかな対応を実現
このように計画立案等へのデータ活用に課題はあるものの、プラネットの販売データに切り替えたことは大きなプラスだ、と佐藤部長は指摘する。
「数字にとらわれすぎて単なる数字遊びになってはいけませんが、営業が日頃から数字に触れていると感覚が鋭敏になり、全体の流れが見えるようになってきます。販売データは営業センスを高める非常に有効なツールだと思います」。
また、販売データで予想以上のメリットを実感しているのが、取り扱い店舗確認時のスピード感だ。以前は自社商品が取り扱われている店舗を調べるだけで数時間かかることもあったが、今は販売実績から簡単に対象店舗を絞り込むことが可能で、問い合わせにもすぐに対応ができるようになった。
「当社では、お客様がお待ちくださる場合、こちらから納品実績のある店舗に電話して在庫の有無を確認した上で、確実に在庫のある店舗をご案内しています。こうした細やかな気づかいのサービスができるのは、タイムリーに実績を把握できる販売データと、標準取引先コードを支える取引先データベースがあればこそ、です。今後、店舗の大きさや属性情報も得られるようになると、さらに利便性が増すのではないでしょうか」と宇津専務は期待を寄せる。
一方、佐藤部長は販売データへの要望として、量販店物流センターへ一括納品した際の店舗別販売実績の把握を挙げた。
「量販店様物流センターへの一括納品の場合、店舗への販売実績は不明、というケースがありますが、メーカーとして物流や在庫の最適化を行う上で、ある卸売業様の倉庫からどれだけの店舗に出荷されているか、という情報は非常に重要です。卸売業様・小売業様の経営効率化にも関わる問題ですので、ぜひご協力いただけたら、と願っております」。
変わりゆくニーズに的確かつタイムリーに対応するためにも、この問題についてはサプライチェーン全体として取り組む必要がありそうだ。
販売データや取引先データベースがより多くのメーカーで活用されるよう、プラネットは今後、本誌やユーザー会などを通じ、積極的に事例紹介を行ってゆくとともに、サービスの付加価値向上に努めてゆく予定だ。