II. 運 用 編

第1章 運用方法についての解説


ここでは小売業・卸売業間のEDI実現にあたって考慮すべき点について解説します。固定長方式と可変長方式での運用方法の違いや、業種・業界における運用ルールの違いなどを解説することで、当概要書の仕様をより多くの企業で活用していただくことができると考えます。

1.可変長運用と固定長運用について

(1)運用方法の違い

 ここでは固定長メッセージを用いたEDIの運用と可変長メッセージを用いたEDIの運用の違いについて解説します。
 1970年代より通信の自由化がなされ、多くの企業間通信が実現するようになりました。これらは当時の主流の通信方式である同期式2400BPSの速度で公衆通信回線(アナログ)を使用してとり行われていましたが、20年余の経過により、通信速度の飛躍的な高速化及び、ディジタル回線の活用、とりわけ固定長のメッセージから可変長のメッセージへと変化をとげてきています。しかし固定長の利用が全くなくなったわけではなく、現状ではまだ企業間通信の過半数が固定長メッセージにて運用されています。
 そこで当概要書では、主要なEDIデータ種については固定長でも運用が可能となるように定義を(7種)行い、また可変長についてはもう一歩踏み込んだデータ種(35種)を定義しました。固定長メッセージについての活用方法は、「運用を新規に定義したい」、「現行の数あるメッセージフォーマットを統合したい」などの場合に業界標準として採用するということになります。また可変長メッセージについての活用方法は、「パソコン間で通信(EDI)を行いたい」、「高速回線をより有効に使いたい」などの場合に利用できます。
 さらに可変長メッセージでは不必要な項目は省略でき、かつメッセージ項目の中に希望するものがなければ後ろに追加定義できるという柔軟性があることが特徴です。今まで「標準化」といっても固定長の予備桁を個別企業ごとに定義して不具合な部分を補ってきましたが、予備桁に限界があるなど対処が困難である場合がありました。可変長ではそうした個別対応の柔軟性が得られました。しかしその反面行き過ぎの個別対応になる可能性もあるために、EDIを決める当事者間の慎重な設計が望まれることはいうまでもありません。


(2)コンピュータのアーキテクチャによる違い

 従来機と呼ばれるアーキテクチャのコンピュータについて少し触れておきます。
 従来機と新世代機(パーソナルコンピュータやサーバなどと呼ばれるコンピュータ)では、標準的なファイルの持ち方が異なります。前者は固定長が基本(可変長データも取り扱うことができる)で、後者は可変長が基本(当然こちらも固定長データが取り扱える)です。従来機は現在次々にアーキテクチャの変更を行い、新世代機に融合しつつありますが主流となると考えられます。

  • より高速な通信が可能となるコンピュータへ変化する。
  • データの圧縮が行われ、無駄な部分は省略される。
  • セキュリティの確保を万全にするための暗号化や認証技術が確立される。
  • 項目の定義がより増加するとともに状況の変化に対応しやすい方式となる。
  • より共通性の高い標準化が求められ、共通のデータベース化が進む。
  • より多くの取引内容がEDI化され、ところによりペーパーレスができあがる。
 こうした仮説から従来機が新世代機に近づいて行くのは当然であると考えられます。同時に固定長メッセージによるEDIは可変長メッセージによるEDIへと変貌して行くでしょう。