本書の考え方と活用方法

  小売業・卸売業間の取引業務の効率化のために、EDIは今後とも進展していくものと思われます。そして基本的なEDIの機能が達成できなければ、取引相手として不充分であるとの声も聞かれるようになってきました。
こうした環境の中、化粧品日用品業界においてもメーカー・卸売業のみならず、小売業・卸売業間のEDIの全体像がどのようになるかを示す必要がでてきました。このために全国化粧品日用品卸連合会(全卸連)により「全卸連EDI研究会」が平成7年6月に発足しました。全卸連の情報システム委員会の専門委員が中心になり、メーカー、業界団体等の協力のもとにまとめあげました。


1.考え方

 小売業・卸売業間のEDIは、流通業の標準通信手順としてJ手順及び固定長の受発注標準フォーマットが制定された昭和57年を境として、多くの企業において受発注システム(EOS)として採用され始めました。せっかく標準フォーマットが制定されたにもかかわらず、その詳細な仕様は各社各様となり、現在も多くの卸売業では百数十種のEOSフォーマットが必要となり、システム開発費の負担が重くのしかかっております。
このような状況で今後、全取引を完結するための数十種類のデータ種に対し、小売業各社から様々な仕様での開発を要求された場合、専用パソコンの設置や運用管理など、システムメンテナンスに多大な費用と労力を払わなければならなくなることが予測されました。これらを防ぎ標準化を進めるために研究会では、小売業・卸売業間に必要なデータ種を洗い出し、化粧品日用品業界のみならず、多くの業界で活用できるデータ種・データ項目を検討することといたしました。
データ種の洗い出しの基本となるのは商取引です。この検討にあたっては現実的な見方をとり、実際に行われている商取引をもとにデータ種の洗い出しを行い、現在企業間にて利用されているデータ種・データ項目をも包含するように検討を進めました。また、将来利用されるであろうデータ種についても、さらに検討を加えました。その結果、現実に運用されている固定長フォーマットでは、主たるデータ種として7種類を定義。すなわち標準的なデータ種については固定長フォーマットを定義したことにより、現状のコンピュータ資産でEDI基本メニューのデータ交換が可能となりました。
さらに新たなデータ交換の手段としてオープン系のシステムでの利用に合せた可変長については35種類のデータ種を定義し、その代表されるメッセージについては可能な限り標準的なデータ項目を定義しました。これにより回線速度など、従来方式によるシステムネック等をパソコンによるシステムに移行する際、最小限の投資で済むようになりました。
また小売業・卸売業間の商取引の形態については、それぞれの企業の考え方及び企業環境により異なるため、ワンパターンでは現実的な対応は不可能と考え、合理性のあると考えられる複数の取引パターンを、可能な限り採用しました。これらを踏まえ、あらかじめ基本のパターンを自社のシステムに組込んでおくことにより、EDIの導入も若干の手直しで済むと考えました。
コンピュータの発達により、企業の枠組みを越えて情報の共有化が可能になった現在でも、一般的なEDIは「処理の迅速化」「ペーパーレス化」を目的として取組まれていますが、私達はこのEDIをECR/BPRの手段と位置づけ、流通システムの再構築に取組むべきと考えました。その為には、社内外の情報の流れを、川上から川下までトータルに流れるよう業務の流れを整理しデータ化し、効率的にローコストオペレーションが達成できるように、取引業務の改革をしなければなりません。本質的には消費者にとって付加価値のないコストを極限まで削減し(ムダ、ムリ、ムラを省く)、「商品情報の共有化」「納品・入荷の効率化」「買掛・売掛の一致」等を達成させ、ローコストオペレーションで結ばれた流通システムを構築すべきと考えています。


2.活用方法

 業界標準から業際標準へと、そしてEDIFACT等の国ベースでの標準化された手順への移行が容易なように、項目等の配慮をしたつもりであります。私達化粧品日用品業界では過去に行ってきた業際統一伝票や統一フォーマット等の標準化の経験から、食品、菓子、一部のスポーツ用品、アパレル等、現在実用化されている流通業界の統一伝票、EOS、そしてEDI等の資料を参考に本書をまとめましたが、まだまだ不足していると思われます。そこで小売業・卸売業間の標準化を進めるためのたたき台として、以下に述べるような方法等で(まだまだあると思われますが)具体的に利用し、その結果をフィードバックして頂くことを期待します。

(1)
標準化の為のツールとしての利用する。
①多くの業界に利用してもらえる様にPRし、意見をもらい常に実態を反映したものとするために、一定期間毎に改訂していく。

②小売業・卸売業のみならず、ソフト会社、地域VAN等のシステム開発各社にも理解してもらい活用して頂く。

③標準化により開発費用等の低減をはかる。
(2) 新しいオープン系システムに移行する段階で、お互いに協力しながら、互いにメリットのあるシステムを目指すためのたたき台資料として利用する。
(3) 自社からの積極的な提案を行うための基礎資料としての利用する。



■I.概要編