5.業界ごとの違い

次に業界による運用方法の違いや項目の違いについて説明します。

(1)運用方法の違いについて

 いままで、たとえ一つの業界の中でも運用方法がまちまちでなかなか標準化できなかったことが多かったのですが、今まで説明してきたようにコンピュータの使われ方が変化してきたことで、少し事情が変わってきました。例を挙げると、EDIの項目が少々異なっていても追加項目が自由になり、省略項目はカンマのみでデータを送らなくてもよくなっていますので、ほとんど自由に項目設定ができるようになったことです。逆に今まで固定的なメッセージフォーマットで何とか標準化を果たしてきたのに、自由になってしまったことで要求が厳しくなってしまうと考える企業もあるでしょう。どちらの考え方も現実にあてはまりますが、ECR的な理解の仕方をすると、積極的に新しい項目を追加できるほうがよく、そうでない考え方に基づくと、あまり項目が増えないほうがよいということになるのではないでしょうか?また複数の業界が参加するようなEDIプロジェクトでは要求度合いがそもそも異なるために、最も込み入った業界にあわせて開発することになるなどの問題もあります。
 しかしこのままではEDIの進展は遅れるばかりで、先に進めない状態に陥る危険性もあるのです。考え方としては次の3つがあります。
      消極的に化粧品日用品業界で使うもので固定的に定義する。
      関連業界のあらゆる項目を加えた最大限のものを定義する。
      .やや積極的に周辺業界の特性も研究し、最小限考慮し定義する。
 そこでこの概要書ではある程度の周辺業界の項目は取り入れていますが、あまり深く追求せずに拡張性を持たせる方向で解決しようとしたのです。
 そうはいってもまだ決定的に不足している項目やデータのやりとりがもれていることも十分考えられますので、当業界はもとより周辺業界の方からも今後情報収集していく必要があろうと認識しながら定義したつもりです。
 特に運用方法にはさまざまな業界習慣があるために当概要書の方法論が使用できないこともありますので、次のように 考える必要があるでしょう。
 この概要書以外の運用を必要としたときに、まず運用フローは変えてもメッセージフォーマットは使えないか検討します。それが無理な場合、この概要書のメッセージフォーマットの後ろに項目を追加することで目的を果たせないのかどうかをチェックします。それでもだめであれば仕方がないと考えます。またこの概要書に対してはそうした事例からバージョンアップを図ろうと計画していますので、意見を事務局に報告し反映してもらうということもできます。


(2)項目の違いについて

 先述したように、周辺業界の項目を研究してはいますが、項目の名称や使用方法については当業界のものを採用しています。同じ「数量」でも多少の違いがありますし、「納品日」などでは多くのバリエーションがあります。また業界特有の言葉もありますので本来すべて説明する必要があるかもしれませんが、ほとんどの場合説明は不要と考え特に説明してありません。
 こうしたことから項目の名称を小売業に合わせたり、他業界のものに合わせたりすることが考えられますが、名称の変更については自由に行うことができます。またフォーマットが変更されない限り、項目名の意味する範囲内で異なる使い方ができると考えてください。そうした考え方に合わない変更はできるだけ避け、必要であれば別項目の追加をしてください。