(3)『Aパターン』と『Bパターン』との違い

これらの2つのパターンは基本的な発想は同一ですが、システム化のレベルの想定が異なります。さらにいえば、EDIの効果も異なることから、それらの違いを明確にすることが必要となるでしょう。

以下に解説します。


  ①. データ精度の違い
     
     『Aパターン』ではあくまでもEOS発注が小売業ベースで100%という前提でフローが作られています。従って電話やFAXで追加発注されることもなく、手書きまたは手入力によるミスも発生しないということになります。『Bパターン』ではそうしたミスが発生するという前提でシステムを設計しなければならないので、運用も複雑になり、また作業の効率もやや悪くなるといえるでしょう。『Bパターン』ではさらにミスやデータのもれが累積されてくる為に請求・支払のタイミングでは修正がおこりやすくなってしまいます。

 
  ②. データ加工の違い
     
     『Aパターン』では発注データを送受信することで、まとめて出荷指示として使用できますが、『Bパターン』では追加発注などのタイミングまで待たなければならず、処理が完結するまでに人的な操作介入が必要となります。発注データは在庫マスタに照合され卸売業としての受注引当てがなされますが、『Aパターン』ではすぐに受注を締めて出荷指示となるので、ASNを発行するにも「送信A」としてすぐに送ることが可能です。納品データを受け取った小売業は発注データと突合することで欠品を把握、確認することができます。『Aパターン』では精度が高いので、ほとんどの場合卸売業から送られたデータを活かせることになりますので、各店舗でのスキャニングなどによる検品システムへどうデータを送るかという点も有利になります。『Bパターン』では本部でチェックをかける必要性が大きい為、本部経由で各店に検品用データを送ることになります。『Aパターン』では直接店舗へ卸売業が送信してしまってもそのまま使い、商品の納品内容に間違いをチェックしてから本部へ送るようにできるので、店舗・本部間のデータ転送が少なくて済むようになるのです。『Bパターン』は全般的に送受信されたデータに対して何らかのデータ加工が必要となることが多く、逆に『Aパターン』では限りなく少なくおさえられるといえるでしょう。

 
  ③. 債権・債務情報の整合性
     
     『Bパターン』に関しては発注データの入力が小売業(オンライン分)、卸売業(手書き分)とあり、返品データは小売業でも入力できますが、卸売業で入力することが基本となっています。また返品データの訂正についてもほとんどの場合、口頭による確認が残ると考えられます。逆に『Aパターン』ではそうした入力ソースが絞られているので整合性がほとんどあると考えられます。特に債権・債務情報となると『Bパターン』の場合には支払予定データや請求データに対して訂正することがほとんどでリアルタイム性に欠ける作業となることがいえるでしょう。『Aパターン』では納品確定データや返品データ、そしてそれぞれの訂正データをやりとりすることで1日単位での整合性を確保するようにし、ずれたとしても数日遅れであるといえましょう。