1. 小売業の品揃えと店舗内オペレーションの効率化
     小売業の品揃え、或いは荷受け、店内作業等の効率化の側面から見ると現状の帳合制度をはじめとする従来のメーカー別縦割りの取引、物流のあり方は、多くの問題を内在している。例えば、あるカテゴリーの売場を構成するためには多くの卸売業とのかかわりが必要であり、また、その商品の納入においても多くの卸売業の個々の物流にかかわらなければならない。このことは小売業から見ると多くの非効率を生んでいることになっている。そこで昨今では、帳合の集約化が行われたり、物流面では、窓口問屋制、専用センターによる一括納品、カテゴリー別納品などがクローズアップされてきているわけである。
     集約物流センターを想定すればそのセンター内で小売業が必要とする全ての商品のアソートが可能となり少なくともこれら物流面での問題は解決が可能になる。言わば、地域における完全な「業界フルライン化」が達成出来るわけであり、その意味では集約物流センターの可能性は大きい。
    (尚、業界サプライチェーン研究会では、第1部でもふれているように化粧品日用品を対象とし、制度化粧品や加工食品、菓子など隣接業界は除外し、あくまで業界内におけるフルラインを「業界フルライン」と呼んでいる)

  2. 健全な競争
     集約物流センターにより物流が集約されると、卸売業における物流機能そのものの差別化戦略はとりにくくなると同時にコスト競争にも大きな影響を与えることが考えられる。競争の原理が集約化によって活かされなくなる可能性がある。競争がなければ健全な成長も得られなくなるし、小売業にとっても取引の自由度が弱まることにもなる。しかし、集約物流センターは必ずしも競争を阻害するものではなく、あくまでも共通プラットフォームであり、競争の次元をさらに高めるものである。そして卸売業の本来的機能であるマーチャンダイジング提案、プロモーション提案、エリアマーケティングの展開など、いわゆるリテールサポートを中心としたさらに高いレベルの競争を促進するものであると考えられる。

  3. 規模の生産性
    卸売業の競争力を高めるための一つの要素として売上規模の拡大がある。  
    集約物流センターであれば当然その規模も大きくなり投資の可能性も高まる。それによりサービス品質を維持向上でき、また、効率化のために必要な技術を取り込むことも可能性としてでてくる。さらに小売業の規模拡大と地域拡大に伴った物流ニーズにも応えることが可能となってくる。論理的にはメーカー物流も含め総体的コストを低減させる可能性もある。

  4. 運営主体のあり方
     集約物流センターの運営にあたっては地域の単一卸売業が代表して運営を行うか、参加した卸売業の中から運営主体となるメンバーを選出し、共同の運営を行うか、第三者企業が請け負うのかなど、いくつかの選択肢がある。代表企業による運営、数社の共同運営、組合方式、運送業者への委託など運営主体の候補は様々である。これらのどれが集約物流センターの運営にふさわしいかを充分検討して選択する必要がある。その選択が集約物流センター運営の成否を決める大きなキーポイントにもなる。(第4章参照)