(2)業界サプライチェーン・モデル作成の目的

 第1部の業界サプライチェーン・ビジョンでは、化粧品日用品業界の大きな構造変化の中で、業界がどのような方向にすすんでいくべきかを、特に物流の効率化に焦点をあてて検討する。具体的には、化粧品日用品業界全体で物流コストが最小化するには、1) 全国に必要な中間物流拠点の数、2) メーカーから中間物流拠点の間の輸送の効率化の検討、3)小売店の数など現在の前提条件が変わった場合の影響、を数式で表現されたモデルによって算出する。
 物流のほかにも、消費者の望む商品を開発するしくみや、取引制度の改革など、検討するべき課題は他にも数多くあるが、物流は、流通の基本となる機能であり、デフレ経済に対応するためコスト削減において現在もっとも焦点となっている課題であることから優先してとりくんだ。

  このモデルでは、輸送、在庫といった物流の機能のみに着目し、「誰がこの機能を担うか」については、言及しない。例えば、本報告書の「中間物流拠点」は、卸の物流センターであるかもしれないし、小売やメーカー、物流業者の運営する拠点であるかもしれない。「中間物流拠点」をどのような主体がどのように運営する可能性があるかは、第2部の地域共同物流プラットフォームモデルで言及する。

 また、このモデルは、業界全体を扱って数式で表現するため、かなり単純化、抽象化がなされている。実際にこのモデルを活用するには、さまざまな他の要素を加えなければ役立たないかもしれない。しかし、業界全体のビジョンを与えるには、モデルは単純である方がよい。実務上、新たな条件を加えた方が有用と判断された場合は、本報告書によってモデルの内部の式の1つ1つが公開されているので、数式を書きかえ、算出しなおすことができる。今後、サプライチェーンの将来像について、社内や企業間で話し合いの場をもたれる場合に、このモデルが出発点となれば幸いである。